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司法制度改革:21世紀の司法制度を考える

-司法制度改革に関する裁判所の基本的な考え方-

司法制度改革審議会は,平成11年12月8日,法曹三者に対して司法制度改革に関する意見聴取を行いました。
最高裁判所は,我が国の司法制度の現状と問題点を分析した上で,司法制度改革に関する裁判所の基本的な考え方を示しました。
この「21世紀の司法制度を考える」は,最高裁判所が意見陳述に際して同審議会の各委員に配布したものです。

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<概要>
全体図

  1. 裁判所の基本姿勢
  2. 我が国の司法制度の概観
    ・我が国の司法制度はどのように変遷してきたか
    ・戦後の司法改革はどのように行われてきたか
    ・我が国の司法制度の特徴は何か
    (1)統一性と等質性
    (2)精密さと真相解明 / 自己責任システム」の未成熟
  3. 我が国の司法の現状と問題点
    ・どのような裁判がなぜ遅いのか
    ・裁判の費用はどこに問題があるのか
    ・専門的紛争へ対応しているのか
    ・紛争解決のメニューは十分か
  4. 改革の在り方とその方向性
    ・改革の在り方をどう考えるべきか
    ・改革の方向性をどう考えるべきか
    [制度的基盤について]
    (1)法曹の機能の強化
    (2)専門的紛争への対応と多様なニーズへの対応
    (3)国民の司法参加
    [人的基盤について]
    (1)法曹養成
    (2)法曹一元
  5. 裁判所の期待するもの・心するもの

1. 裁判所の基本姿勢

 現行の司法制度がスタートして以来50年余を経過した。この間,社会経済情勢は大きく変化した。このたび,当審議会において,司法制度全般について,利用者である国民の視点に立って,その機能と役割の充実強化を図るための検討がなされることは有意義であると考えている。
 この審議会において,現在の司法制度の実情と問題点を明らかにし,来るべき「21世紀にふさわしい国民のための司法」を築くため,実りある検討がなされることを期待するとともに,その審議にできる限りの協力をしてまいりたい。

2. 我が国の司法制度の概観

 各国の司法制度についての基本的な資料,参考人等の意見から明らかなとおり,司法制度やその背景にある法文化は各国によって大きな相違があり,我が国の司法制度も独自の特色を有している。

我が国の司法制度はどのように変遷してきたか(資料12参照)

<戦前の制度>

 我が国の近代的司法制度は,明治憲法制定後の明治23年,裁判所構成法によってその骨格が定められた。
  裁判所は,大審院・控訴院・地方裁判所・区裁判所という組織で構成された。裁判所に検事局が置かれ,裁判官及び検察官はともに司法官として養成され,司法行政の監督権は司法大臣が有するなど,その骨格は主としてドイツの制度に類似しており,裁判手続も職権主義を基本としていた。法曹養成については,司法官(裁判官・検事)と弁護士とは別々の養成制度が採られていた。

<戦後の制度>

 日本国憲法の制定に伴って,司法制度もアメリカの制度にならって大きな変革を遂げた。
 裁判所に違憲審査権が与えられるとともに,司法権はすべて裁判所に属することとされ,戦前にあった行政裁判所のような特別裁判所の設置が禁止された。最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所のほか,家庭裁判所,簡易裁判所が新設され,司法行政の権限も裁判所に与えられた。裁判手続の面では,民事訴訟,刑事訴訟において,当事者の訴訟活動をベースに審理を進め,その結果に基づき裁判所が判断を示すという当事者主義の手続が大幅に採り入れられた。法曹養成については,法曹三者に共通の司法試験及び司法修習制度が採用された。

戦後の司法制度改革はどのように行われてきたか(資料34-14-2参照)

 戦後の司法制度改革の動向は,紆余曲折があったが,大きくみると3つの時期に分けることができると思われる。第1期は,新憲法制定から昭和30年代末の臨時司法制度調査会まで,第2期は,臨時司法制度調査会から昭和50年代末ころまで,第3期は昭和50年代末からこの審議会設置に至るまでの期間である。

第1期~新制度の草創期

 この時期は,いわば新制度の草創期で,裁判所法,弁護士法,司法試験法をはじめ,刑事訴訟法等の基本法の制定が行われ,司法修習課程を経た法曹が養成されるようになった。
 民事訴訟事件数はいまだ少なく,昭和30年には14万3000件余で,戦前で最も事件数の多い昭和6年の約26万1000件の54.6%に止まっている。逆に刑事訴訟事件は昭和23年には約28万件と戦前戦後を通じて最大を記録し,以後漸次減少していくが,昭和30年でも17万1000件余と昭和初期の3倍程度を続けており,不安な世相を反映している。

第2期~理念的対立による停滞

 裁判官志望者の数が減少する等の事情もあって昭和30年代に訴訟遅延が深刻な問題となり,昭和37年,裁判官の確保の方策等について検討するため臨時司法制度調査会(臨司)が設置され,法曹一元問題,裁判官及び検察官の任用・給与に関する制度等を中心として検討された。昭和39年に出された意見書は,法曹一元問題のみならず,当時の司法制度全般にわたって検討を加えた総合的な改革の指針ともいうべきものであった。
 しかし,日弁連は,臨司意見書につき「法曹一元に対し消極的姿勢を示し,民主的司法の理念と相容れない官僚制的側面の除去に熱意を欠き,訴訟促進や裁判手続の合理化を追求した能率主義にとらわれている」などとして,これを厳しく批判し,この意見書に沿った改革に協力できないとの姿勢をとった。そのため,その後は,基本的に臨司意見書に従って制度改革を進めようとする裁判所・法務省と弁護士会との間の対立が顕著となり,法曹三者の合意を要する改革は著しく困難となった。このような状況の中で裁判官等の給与の改善,裁判所調査官制度の拡充,専門部の拡充等,部分的な改革が行われるにとどまった。
 昭和45年,簡裁の事物管轄が訴額10万円から30万円に引き上げられるに際し,裁判所と弁護士会との意見調整が難航した。この法案に関する国会審議の過程において,司法制度に関する改革については法曹三者の意見を調整して法案を提出すべきであるとの付帯決議がなされ,これを契機として昭和50年三者協議会が設置されることとなった。なお,その設置に先立つ昭和49年にも,弁護士会との意見調整ができないまま,調停制度の改正がなされた。
 このように,第2期は,いわば理念的な対立によって制度改革が停滞した時期であったといえよう。

第3期~空白を埋める改革の努力

 昭和50年代末ころから,民事訴訟事件が急増し,事件数も20万件を突破し,昭和60年には一挙に36万件に達するに至った。一方,このころから,司法制度の見直しについて次第に法曹三者の意見の合致が見られるようになり,昭和57年に簡裁の事物管轄が再度拡張されたのに引き続き,昭和62年に簡裁の配置の見直し,平成元年に地家裁支部の配置の見直しが実現された。弁護士から多数の裁判官を採用するための方策として,昭和63年には弁護士任官の要領が取りまとめられ,平成3年には日弁連の意見も取り入れて要領が改正された。また,同年には司法試験合格者の数を増加させることなどを内容とする司法試験制度が改正され,さらに平成8年には,利用しやすく迅速な裁判の実現を目指した民事訴訟法の改正が実現された。
 この流れを要約すると,第2期すなわち臨司意見書以後の約20年近くの間は,法曹三者の意見を調整することが著しく困難な状況が続き,国会の付帯決議もかえって司法制度改革を妨げる結果となったといえよう。ちなみに,法曹三者の意見調整が困難で法改正にまで至らなかった動きとしては,かつての少年法改正問題,弁護人の辞任・解任対策法案の問題等がある。
 第3期すなわち昭和50年代後半から現在までに至る一連の制度改革の動きは,第2期における改革の空白を埋めようとするものである。その意味ではやや遅ればせながら,法曹三者が情勢認識に目覚め,理念的対立を解いて改革に向けた努力を積み上げつつあった時期であるといえよう。

我が国の司法制度の特徴は何か

 我が国の司法制度は,歴史的に見れば,中国法の影響を受けた古来からの固有法の土台があり,近代になって前述のとおり,大陸法及びアメリカ法それぞれの影響を強く受けてきたといえよう。
 しかし,近代的司法制度創設から数えても,既に100年以上を経過し,この間に我が国の歴史的,社会的風土の中で独自の法文化が形成され,我が国の司法制度は,これらの諸外国と異なる独自の特徴を備えるに至っている。

(1)統一性と等質性

 我が国の社会は,歴史的,地理的な条件等から,諸外国と比べるとかなり同質的であるといえようし,国家機構も連邦と州といった二重構造を採っていない。このような背景もあって,我が国の司法制度は,かなり統一的な構造となっている。さらに,我が国社会の平等志向を反映して,司法制度の運用における等質性の要請は極めて強い。
 このため,司法運営に当たっては,全国的に統一された制度のもとで,等質な司法サービスを提供し,等しく公正な裁判を実現することが重視されている。

(2)精密さと真相解明 / 自己責任システム」の未成熟

 我が国では,諸外国に比べ,伝統的に,裁判において,法論理及び事実の認定について精密さが要求され,紛争や事件の真相の解明(真実の発見)に強い関心が置かれている。
 我が国の訴訟手続の原則となっている「当事者主義」は,一言でいえば,訴訟の進行と結果について当事者が責任を負うという,いわば「自己責任のシステム」であり,裁判の結果は当事者の活動によって左右されるものという考え方である。しかし,実体について,真実の発見という強い要請があるため,裁判所が当事者の活動の不足を補う後見的役割を果たし,事実の解明に努めることが求められる。
 裁判所の後見的役割の必要性をより強くする要因として,弁護士の付かない民事訴訟(いわゆる本人訴訟)の比率が極めて高いこと(平成10年では,簡裁では約99%,地裁では約60%,資料5参照)が挙げられる。また,弁護士が付いた事件であっても,調査不足等から十分な訴訟活動がなされない場合が見られるが,裁判所が訴訟活動の示唆を与えることを当事者から期待されることが少なくない。その意味で,手続的には当事者主義を採りつつ,実体については,真相解明のための職権の行使が求められるという,我が国独特の制度運用が生じている。

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