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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行ウ)3

事件名

 所得税更正処分等取消請求事件

裁判年月日

 平成19年5月16日

裁判所名

 さいたま地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 アメリカ合衆国ニューヨーク州法に基づき組成された,その構成員に有限責任の保護を提供し,構成員が積極的に経営に参加する権利を有する事業形態であるLLC(リミテッド・ライアビリティー・カンパニー)が,我が国の租税法上の外国法人に当たるとされた事例 
2 アメリカ合衆国ニューヨーク州法に基づき組成された,その構成員に有限責任の保護を提供し,構成員が積極的に経営に参加する権利を有する事業形態であるLLC(リミテッド・ライアビリティー・カンパニー)の構成員が,同国のいわゆるチェック・ザ・ボックス規則により,同LLCが法人としての課税を受けるのではなく,パートナーシップとしての課税を受けることを選択した結果,同LLCの構成員各人の持分割合に応じてその所得又は損失となるとして,我が国において,同LLCの行った不動産賃貸業に係る収支及び同LLC名義の預金利息収入を,自己の不動産取得及び雑所得として所得税の申告をし,同LLCから同人に送金された分配金を含めずに申告したところ,前記不動産賃貸業により生じた損益及び預金利息収入は法人としての前記LLCに帰属し,同人の課税所得の範囲に含まれないとして是正され,また,前記LLCから同人に送金された分配金が配当所得に該当するなどとしてされた所得税に係る更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分の取消請求が,棄却された事例 
3 アメリカ合衆国ニューヨーク州において,相互にパートナーシップ契約を締結して不動産賃貸業等を営んでいたが,同州の法律に基づき,その構成員に有限責任の保護を提供し,構成員が積極的に経営に参加する権利を有する事業形態であるLLC(リミテッド・ライアビリティー・カンパニー)に組織変更し,その構成員となった者が,同国のいわゆるチェック・ザ・ボックス規則により,同LLCが法人としての課税を受けるのではなく,パートナーシップとしての課税を受けることを選択した結果,同LLCの構成員各人の持分割合に応じてその所得又は損失となるとして,我が国において,同LLCの行った不動産賃貸業に係る収支及び同LLC名義の預金利息収入を自己の不動産取得及び雑所得として平成10年から同12年までの所得税の申告をし,また,同LLCから同人に送金された分配金を含めずに申告したことにつき,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」が認められないとされた事例

裁判要旨

 1 アメリカ合衆国ニューヨーク州法に基づき組成された,その構成員に有限責任の保護を提供し,構成員が積極的に経営に参加する権利を有する事業形態であるLLC(リミテッド・ライアビリティー・カンパニー)につき,我が国の租税法上,法人に該当するかどうかは,私法上,法人格を有するか否かによって基本的に決定されているところ,外国の法令に準拠して設立された社団や財団の法人格の有無の判定に当たっては,基本的に当該外国の法令の内容と団体の実質に従って判断するのが相当であるとした上,前記LLCは,米国のニューヨーク州法に準拠して設立され,その事業の本拠を同州に置いているのであるから,前記LLCが法人格を有するかについては,ニューヨーク州法の内容と前記LLCの実質に基づいて判断すべきところ,前記LLCは,ニューヨーク州法上法人格を有する団体として規定されており,自然人とは異なる人格を認められた上で,自己の名において契約を締結するなど,独立した法的実体として存在しているから,我が国の租税法上の外国法人に当たるとした事例 
2 アメリカ合衆国ニューヨーク州法に基づき組成された,その構成員に有限責任の保護を提供し,構成員が積極的に経営に参加する権利を有する事業形態であるLLC(リミテッド・ライアビリティー・カンパニー)の構成員が,同国のいわゆるチェック・ザ・ボックス規則により,同LLCが法人としての課税を受けるのではなく,パートナーシップとしての課税を受けることを選択した結果,同LLCの構成員各人の持分割合に応じてその所得又は損失となるとして,我が国において,同LLCの行った不動産賃貸業に係る収支及び同LLC名義の預金利息収入を,自己の不動産取得及び雑所得として所得税の申告をし,同LLCから同人に送金された分配金を含めずに申告したところ,前記不動産賃貸業により生じた損益及び預金利息収入は法人としての前記LLCに帰属し,同人の課税所得の範囲に含まれないとして是正され,また,前記LLCから同人に送金された分配金が配当所得に該当するなどとしてされた所得税に係る更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分の取消請求につき,前記LLCは我が国の租税法上の外国法人に当たるから,その所得は法人課税の対象となり,その構成員の課税所得の範囲には含まれず,また,前記分配金は,実質的には,前記LLCにおいて,事業に係る賃貸ビルの市場価額が増加し含み益が生じたことや,不動産賃貸業による利益が計上されたことを背景に,剰余資金をその出資者に利益の配分として分配したものと認められるから,同人が出資者である地位に基づいて供与した経済的な利益であり,同人の配当所得に当たるとして,前記請求を棄却した事例 
3 アメリカ合衆国ニューヨーク州において,相互にパートナーシップ契約を締結して不動産賃貸業等を営んでいたが,同州の法律に基づき,その構成員に有限責任の保護を提供し,構成員が積極的に経営に参加する権利を有する事業形態であるLLC(リミテッド・ライアビリティー・カンパニー)に組織変更し,その構成員となった者が,同国のいわゆるチェック・ザ・ボックス規則により,同LLCが法人としての課税を受けるのではなく,パートナーシップとしての課税を受けることを選択した結果,同LLCの構成員各人の持分割合に応じてその所得又は損失となるとして,我が国において,同LLCの行った不動産賃貸業に係る収支及び同LLC名義の預金利息収入を自己の不動産取得及び雑所得として平成10年から同12年までの所得税の申告をし,また,同LLCから同人に送金された分配金を含めずに申告したことにつき,パートナーシップからLLCの我が国へ事業の形態を変更するに当たって,我が国の税務上何らかの変化があり得ることを想定できなかったとまではいえないし,国税庁が同国のLLCを法人として取り扱う旨公表したのは平成13年であるが,それ以前において,課税当局がアメリカ合衆国のLLCを我が国の税務上法人として取り扱わない旨の公的見解を示したことはなく,また,同人が同国のLLCの我が国の税務上の取扱いを税務当局等に確認したことも認められないから,前記分配金が配当所得に当たると認識し得る余地がなかったとはいえないとして,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」が認められないとした事例

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