何らかの事情で出生届が提出されずに「無戸籍」の状態になっている方について戸籍を作るに当たって、裁判の手続が必要な場合があります。ここでは、そのような裁判の手続について説明します。
1.子について、出生届を提出すると実の父ではない人が戸籍上の父となるため、出生届が提出されず、無戸籍の状態になっている場合
出生届は、民法の規定により子の父が推定(※)される場合には、それが実の父ではないときでも、父と推定される人を父として提出することが原則となっています。ただし、裁判の手続により、子と父と推定される人の親子関係が否定された場合には、例外的に、父と推定される人を父とせずに出生届を提出することができます。
※ これを「嫡出推定」といいます。
具体的には、婚姻中に生まれた子については、母の夫がその子の父であると推定されます。離婚後に生まれた子に
ついても、生まれた時期が離婚後300日以内であれば、原則として、母の元夫がその子の父であると推定されます。
いずれも民法の規定によるものです。
もっとも、民法の規定によれば「嫡出推定」が及ぶように見えるものの、様々な事情から子に(元)夫の「嫡出推
定」が及ばないとされる場合があります。この子を、「嫡出推定が及ばない子」ということがあります。
また、実の父を戸籍上の父とするためには、認知の手続が必要になりますが、実の父が自ら認知の手続をしないときは、別途、裁判の手続が必要となります。
「裁判の手続」には、次のようなものがあります。
主な手続
- 手続名
- 内容
- 嫡出否認調停
- 婚姻中や離婚後一定期間内に生まれた子について、母の(元)夫の子ではないことを確認するための手続です。
〈申立てができる主な方〉
・子(相手方は「母の(元)夫」)(※)
・母(相手方は「母の(元)夫」)(※)
・母の(元)夫(相手方は「子又は親権を行う母」)
※子又は母が申立てをすることができるのは、原則として、令和6年4月1日以降に子が出生した場合に限られます。ただし、同日から1年間に限り、同日より前に出生した子についても、子又は母が申立てをすることができます。期間が限られますので、ご注意ください。
- 親子関係不存在確認調停
- 婚姻中や離婚後一定期間内に生まれた子について、母の(元)夫の子ではないことを確認する手続です(嫡出推定が及ばない子の場合(※))。
※嫡出推定が及ばない子の例としては、(元)夫の長期の海外出張、受刑、別居等のために、子の母と性的交渉がなかった場合など、母が(元)夫の子を妊娠する可能性がない状況で生まれた子が挙げられます。
〈申立てができる主な方〉
・子(相手方は「母の(元)夫」)
・母の(元)夫(相手方は「子」)
- 認知調停
- 実の父に認知を求めるための手続です。(※)
※嫡出推定が及ぶ子の場合には、認知調停の前に、嫡出否認調停を申し立てる必要があります。嫡出推定が及ばない子の場合には、親子関係不存在確認調停を先に申し立てることもできますし、親子関係不存在確認調停を申し立てずに、認知調停を申し立てることもできます。
〈申立てができる主な方〉
・子(相手方は「実父」)
2.自分の戸籍が作成されていない事情が不明であるなどの場合
父母の戸籍が見つからないケースや記憶喪失等により父母が誰か全く分からないケースなど、父及び母が誰か分からない場合には、次の手続による方法が考えられます。
- 手続名
- 内容
- 就籍許可の審判
申立書の書式・記載例 - 日本国籍はあるが、戸籍がない者について戸籍を作る手続です。
無戸籍の方が関係する裁判所の手続について
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家庭裁判所では、家庭裁判所の手続を利用しやすいものにするために、「家事手続案内」を行っています。