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千葉地方裁判所では,平成13年10月から医事関係訴訟の審理を民事第2部に集約し,以下のとおり事件処理の効率化・合理化を図っています。
1. 千葉県医事関係裁判運営委員会
平成14年に医事関係訴訟について,適正かつ迅速な審理を実現するための運営方策等を検討するとともに,医療機関,弁護士会,裁判所の相互の理解を深め,協力関係を推進することを目的として,千葉県医事関係裁判運営委員会が発足しました。現在当委員会は,千葉県内の8つの大学病院(千葉大学医学部附属病院,順天堂大学医学部附属浦安病院,帝京大学ちば総合医療センター,東京慈恵会医科大学附属柏病院,東邦大学医療センター佐倉病院,日本医科大学千葉北総病院,東京歯科大学市川総合病院,東京女子医科大学八千代医療センター),千葉県立の7病院(がんセンター,こども病院,循環器病センター,救急医療センター,精神科医療センター,佐原病院,千葉県千葉リハビリテーションセンター),千葉県弁護士会,千葉地方裁判所の三者で構成され,毎年定例会を開き,医事関係訴訟に関する問題についての協議が行われています。
2. 複数鑑定制度の導入
千葉県医事関係裁判運営委員会では,年々増加傾向にあり,また,その平均審理期間が通常の裁判の約3倍以上と長期化している医事関係訴訟の状況を改善するために,一番の問題であった鑑定制度のテコ入れを行い,複数鑑定制度を導入しました。
複数鑑定とは,迅速に複数の専門家から専門的知見を補充してもらうことを目的とする制度です。当庁の複数鑑定では,通常,その分野の専門家であれば,さらなる研究をしなくとも,比較的容易に結論が出せる性質のものであることから,3人の鑑定人が記録等の鑑定資料を検討し,それぞれ個別に鑑定書を提出する複数鑑定個別方式を原則としています。
実際の鑑定依頼の場面では,事件記録そのものを鑑定人に渡すのではなく,記録を各鑑定人分コピーし,記録の写しを鑑定資料とします。複数の鑑定人が一斉に鑑定に着手できることで鑑定時間の節約になります。
3. 鑑定人の推薦手続の確立
裁判所で,どのような分野の,どの医師が,その事案の鑑定人としてふさわしいかを適切に判断することは難しいため,鑑定人候補者を見つけることが困難な場合が少なくありませんでした。また,高度に専門的な事案については候補者の専門分野と事案とのミスマッチから,候補者に容易に鑑定を引き受けてもらえないこともありました。これらの結果として,鑑定人の確保や鑑定書の作成に長時間を費やすこともまれではなく,このことが迅速な訴訟進行を阻害する大きな要因になっていました。
そこで,千葉地方裁判所では,千葉県医事関係裁判運営委員会の委員である各病院のトップの院長又はこれに準ずる医師に窓口となって頂き事案にマッチした専門医師を推薦いただくことで,鑑定人推薦~鑑定人選任までの期間・手間が大幅に改善されました。この推薦制度は事件の審理期間短縮の大きなポイントとなっています。
4. 医事関係訴訟の平均審理期間
以上のような取組により,千葉地方裁判所における鑑定を実施した医事関係訴訟の平均審理期間は,全国平均との比較でも短く,令和2年の全国平均が58.1か月であるのに対し,千葉地方裁判所の平成28年から令和2年までの平均は51.6か月となっています。
また,鑑定期間(採用~鑑定書提出)については,令和2年の全国平均が4.4か月であるのに対し,千葉地方裁判所の平成28年から令和2年までの平均は3.6か月となっており,迅速な鑑定が実現されています。