サイト内検索

2_3一時取締役・監査役職務代行者(仮役員)選任申立ての方法等

Q1 一時取締役等職務代行者(仮役員)とはどのようなものですか。
 役員が欠けた場合又は会社法若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合において,裁判所は,必要があると認めるときは,利害関係人の申立てにより,一時役員の職務を行うべき者を選任することができると規定されています(会社法346条2項。代表取締役につき同法351条2項)。
 この規定により裁判所が一時役員の職務を行うべき者として選任した者を,一時取締役等職務代行者(仮役員)といいます。
 この一時取締役等職務代行者には,取締役の一時職務代行者(仮取締役),代表取締役の一時職務代行者(仮代表取締役),監査役の一時職務代行者(仮監査役)などがあります。
Q2 一時取締役等職務代行者(仮役員)選任申立ての要件は何ですか。
1. 一時取締役等職務代行者(仮役員)選任については,次の二つの要件が必要になります(会社法346条2項)。
(1)役員が欠けた場合又は会社法若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合に当たること(役員が欠けた場合等)。
(2)選任する必要があると認められること(必要性)。
2. 要件が欠けると考えられる場合
(1)権利義務役員(会社法346条1項)が存在する場合
 任期の満了又は辞任により役員が欠けた場合等に該当するときは,当該役員は権利義務役員となる(会社法346条1項)ので,通常,必要性が欠けると考えられます。
(2)役員が病気になった場合
 単に一時的に病気であるというだけでは,役員が欠けた場合等には該当しません。
(3)取締役等の選任のための株主総会の開催が可能な場合
 ア 取締役等が欠けたものの,取締役等選任のための株主総会が開催可能な場合には,会社法が予定した会社内部における自律的な選任手続をすることができる以上,原則として必要性が欠けると考えられます。
 イ そのため,取締役の一部が欠けたものの,残りの取締役によって後任取締役選任のための株主総会の招集を決議することができる場合には,要件を欠くことになります。
 ウ また,申立人が一定の株式数を保有する株主であり,後任取締役選任のための株主総会の招集許可を得られる場合にも,要件が欠けることになります。
 エ もっとも,監査役の場合に問題となることが多いのですが,後任監査役を選任するための臨時株主総会を開催する時間的な余裕がある場合でも,多数の株主が存在し,その開催に多額の費用を要するなど,事実上臨時株主総会を開催することに困難が伴う場合には,具体的な事実関係にもよりますが,必要性が認められることもあります。
(4)代表取締役選任のための取締役会の開催が可能な場合
 上記(3)同様,代表取締役が欠けたものの,取締役会の定足数を満たす取締役が残存する場合には,後任代表取締役を選任する取締役会決議が可能なため,必要性の要件を欠くことになります。
(5)代表取締役選任のための取締役会を直ちに開催できないが,後任取締役選任のための株主総会の開催が可能な場合
 取締役会の定足数を満たす取締役が残存しないため,後任代表取締役を選任する取締役会を直ちに開催することができない場合でも,上記(3)ウと同様,申立人が後任取締役選任のための株主総会の招集許可を得られる場合には,それによって後任取締役を選任した後,取締役会を開催して代表取締役を選任すること ができるため,必要性の要件を欠くことになります。
Q3 一時取締役等職務代行者(仮役員)選任申立てはどのようにすればよいのですか。
1. 管轄
 本店所在地を管轄する地方裁判所(会社法868条1項)
2. 申立人
 利害関係人(取締役,株主,監査役,従業員,債権者等)(会社法346条2項)
3. 申立手数料
 収入印紙1000円(民訴費用法3条別表第一の16)
4. 郵便切手
4650円分(内訳500円×5、110円×10、100円×5、50円×5、20円×10、10円×10)(堺支部及び岸和田支部も同様)。
5. 予納金について
 選任された仮取締役への報酬・費用等の支払を担保するため,次のとおりの基準で予納金の納付が必要となる場合があります。具体的な金額は,個々のケースで異なります。
(1)次期役員の選任が見込める場合
 次期取締役が選任されるまでの間の報酬等の支払を担保し得る額
(2)予定された仮役員の事務が終了した段階で選任取消しが可能な場合
 選任取消決定がなされるまでの間の報酬等の支払を担保し得る額
(3)次期取締役の選任も見込めず,選任取消しをすることもできない場合
 長期の就任を想定し,かつ,その間の報酬等の支払を十分に担保し得る額(相当高額となると見込まれます。)
6. 申立て等の方式
 書面で申し立ててください(会社非訟事件等手続規則1条)。
Q4 一時取締役等職務代行者(仮役員)選任申立て事件の手続の流れはどのようなものですか。
一般的な手続の流れは,次のとおりです。
 1. 受付相談
 2. 申立書の受理
   立件 事件符号は (ヒ)
 3. 仮役員候補者の選定
   原則として裁判所が適任者を選びます。
 4. 審問期日の指定等
   会社法上,意見を聴取しなければならない者は定められていません(会社法870条)が,実務上審問期日において,申立人,仮役員候補者及び会社(代表取締役又は他の取締役)から必要事項について陳述を聴取します。
   ※ 但し,選任決定の段階で報酬の額を定めるときは,報酬額について陳述の聴取をすることになります(会社法870条1項1号)。
 5. 予納金の納付(予納が必要な事案である場合)
 6. 選任登記嘱託手数料の納付(収入印紙3万円 登録免許税法9条別表一24タ)
 7. 選任決定(同時に,報酬額の決定をする場合もあります。)
 8. 決定の告知(申立人,仮役員等に交付(送達)します。)
 9. 選任登記(裁判所書記官が職権で登記嘱託,会社法937条1項2号イ)
   ※ 仮役員の事務遂行
 10. 仮役員の事務終了
   ※ 仮役員の事務は,次期取締役が選任された時点で終了する場合と選任の取消決定(非訟事件手続法59条1項)がされた時点で終了する場合があります。
 11. 終了報告
 12. 報酬決定(選任時に報酬決定をしている場合を除きます。)
Q5 一時取締役等職務代行者(仮役員)の候補者を推薦することはできますか。
1. 一時取締役等職務代行者(仮役員)は,中立性を確保するため,原則として,裁判所が適任と考える弁護士を選任しています。
 したがって,原則として,候補者の推薦は受け付けていません。
2. もっとも,一時監査役職務代行者の場合で,推薦された者が次の株主総会において監査役に選任される可能性が高いのみならず,他の監査役の全員が同意しているような場合には,業務遂行において中立性に疑いを生じないケースも考えられることから,その候補者を選任することもあります。
Q6 申立書のサンプルはありますか。
サンプルはこちらをご参照ください。
ページ上部に戻る