トップ > 各地の裁判所 > 最高裁判所 > 各種委員会 > 医事関係訴訟委員会について > 第4回医事関係訴訟委員会・第2回鑑定人等候補者選定分科会議事要旨
1. 日時
平成14年3月6日(水)午後3時
2. 場所
最高裁判所大会議室
3. 出席者(敬称略)
委員
森 亘,大西勝也,鴨下重彦,川名尚,菊池信男,木下勝之,黒川高秀,杉本恒明,永井多惠子,橋元四郎平,平山正剛,武藤徹一郎,山口武典
特別委員
名川弘一,御手洗哲也(前川和彦は欠席)
オブザーバー
前田順司,山名 学,中本敏嗣
事務局
千葉勝美,林 道晴
4. 議事
(1)開会の宣言
(2)オブザーバーの紹介及び自己紹介
(3)諮問について
事務局から,2月27日の最高裁判所裁判官会議で本委員会に対する諮問が決定され,その内容は別添資料「医事関係訴訟委員会諮問事項」(PDF:7KB)のとおりであることが説明された。また,この諮問に至る経過や諮問事項に関し,次のような点について付加的に紹介がされた。
ア 従前,本委員会では,目下急を要する「鑑定人候補者の選定」について優先的に取り組んでいただく必要があったが,既に選定依頼案件が10件を超えるととともに,特別委員も任命され,委員会の活動が軌道に乗りつつあることから,改めて基本的な事項について協議していただくために,このたび正式に諮問がされた。
イ 諮問事項は,医事関係訴訟に関し,時宜に応じた論点について自由に幅広く協議していただけるよう包括的な表現となっている。
((3)に関する主な発言)
- 諮問事項を見ると,訴訟手続等の運営面についてのみ検討するように読めるが,制度面についての検討は求められていないのか。
※ これに対して,事務局から,基本的には訴訟手続等の運営を中心に検討していただくことを予定しているが,議論が制度面にまで及ぶような場合は,併せて検討していただくこともあり得る旨説明がされた。 - 諮問に対する答申時期等は,どのようになっているのか。
※ これに対して,事務局から,答申時期等については次回に大枠を決めていただき,できれば平成15年の春ぐらいを目途に答申をお願いしたい旨説明がされた。
(4) 医事関係訴訟懇談会及び本委員会で推薦依頼をした事案の経過について
ア 事務局から医事関係訴訟懇談会及び本委員会で推薦依頼をした事案の経過が報告された。また,協議の結果,1.)委員会を通じて鑑定人候補者を選定した事件が終了した場合は,鑑定を行った医師及び推薦元の学会に対して謝意を表すとともに,事件の終了内容等を通知すること,2.)鑑定を行った医師に対してはアンケートを実施して,裁判所の対応等に関する意見を聞くこととし,具体的な方法は事務局で検討することとされた。
(アに関する主な発言)
- 既に判決や和解で事件が終了した事案も出始めており,鑑定を引き受けた医師や各学会の協力に対し,謝意を表すとともに,判決や和解の内容等を伝える必要が生じてきていると思われる。
- 鑑定を引き受けた医師に対してはアンケートを実施して,裁判所の対応や鑑定手続等に関する意見を聞く必要があろう。
イ 事務局から,推薦事案番号1に関し,選定された日本外科学会から,同学会内の推薦態勢が整うまでに今しばらく時間を要するので,並行して日本消化器外科学会等の下部学会に推薦依頼をしてもらって構わない旨の申出があったことが紹介された。協議の結果,日本外科学会に対する推薦依頼を維持し,当面,他の学会への推薦依頼は行わないこととされた。
(イに関する主な発言)
- 軌道に乗りつつある本委員会のシステムを活用していくという意味からも,ある程度時間がかかっても,日本外科学会内の態勢作りを待って,推薦してもらう方がよいと思う。
- 下部学会に推薦依頼をしても,同様に推薦態勢作りに時間がかかるであろうから,このまま日本外科学会に対してのみの推薦依頼を維持することでよいと思う。
(5) 本委員会で推薦依頼を行う事案について
今回,推薦依頼のあった具体的事例5件について,適切な医療分野の検討をした上で,別添「推薦依頼のあった事案等について」(PDF:35KB)のとおり,依頼する学会を選定した。
((5)に関する主な発言)
- 推薦依頼書中の鑑定人候補者についての希望条件が,一方当事者から出されたものであるような場合にも考慮すべきであるのか。また,当事者が原審における鑑定結果に対して不満があるため,その鑑定人が所属する学会は避けてほしい旨を希望しているような場合でも,考慮すべきであるのか。鑑定結果に不満があるからといって,直ちにその鑑定人の所属学会を除外するのはおかしいのではないか。
- 候補者選定に当たっては,当事者の納得性もある程度は考慮することが必要であると思われる。
- 裁判は当事者が納得することも大事であり,当事者がどうしても納得しない場合には再鑑定もあり得ると思う。
- 一方当事者からの希望であっても,それについて相手方当事者が反対せず,裁判体としてもそれを前提に推薦依頼をしてきたような場合は,考慮要素になろう。
(6)推薦依頼を行うに当たっての留意点について
事務局から,次の3点について報告がされた。
ア 前回の委員会で,委員から,推薦依頼書に患者の年齢を記載すべきであるとの意見が出されたことを踏まえ,平成14年1月に別添資料「医事関係訴訟委員会への鑑定人候補者選定依頼要領」(抜粋)(PDF:90KB)を下級裁に発出し,周知徹底を図った。
イ 従前から,推薦依頼の際には,訴訟関係者の出身大学や勤務歴のある医療機関を明示すべきであるとの意見があったことなどを踏まえ,以下の措置を考えている。すなわち,下級裁には,鑑定人候補者として避けてほしい人の希望がある場合は,その旨を具体的に記載し,事前にそのような希望を出さなかった場合は,後日鑑定に関するトラブルが生じないように当事者によく説明するよう指示する書簡を発出する予定である。
ウ 日本内視鏡外科学会に対して鑑定人候補者推薦依頼をしていた事案について,本委員会(事務局)に対する事前の連絡なしに,依頼元の裁判所から,別途鑑定人の引き受け手が見つかったため本委員会に対する推薦依頼を撤回するとの連絡があった。同学会内で推薦作業を進めている最中にこのような事態になったことに対して同裁判所からの謝罪があったこと,また,事務局として今後こうした事態が二度と生じないように周知徹底を図る予定である。
((6)に関する主な発言)
- 推薦作業を行った学会に対しても,当該事案について,鑑定がどうなっているか,事件の審理がどのように進行しているかといったことを知らせるのが礼儀である。
- 推薦事案については,本委員会として,事件終了までフォローアップすることが必要であると思う。
(7)学会との協力について
事務局から,次の3点について報告がされた。
ア 推薦依頼先の学会に対しては,鑑定手続や裁判所の改善努力等について説明する必要があると考えており,過日実際に日本外科学会へ訪問して説明を行った。また,前回,学会とのコミュニケーションを図り,協力関係を築いていく必要性がある旨の指摘が委員からあったことを踏まえ,依頼件数の多い学会を中心に定期的に委員会の活動状況を報告し,順次その対象となる学会を広げていくことを検討している。
イ 裁判官が学会からの呼びかけに応じて学会の総会等に出席し,鑑定への協力を呼びかける活動が行われている。既に平成13年7月には日本消化器外科学会の総会に東京地裁判事が出席して講演し,平成14年4月には日本外科学会に大阪地裁判事が,日本循環器学会に東京地裁判事が,同年5月には日本整形外科学会に東京地裁判事が,それぞれ伺う予定である。
ウ 日本脳神経外科学会から,同学会のホームページに鑑定手続改善に関する裁判所の取組を紹介してはどうかとの提案を受け,別添資料「日本脳神経外科学会のホームページ-鑑定手続の改善に向けて-」(抜粋)を掲載させてもらった。
((7)に関する主な発言)
- 日本整形外科学会では,専門分野ごとに鑑定人の候補者リストができ上がり,推薦態勢が軌道に乗ってきている。
(8)医療集中部における取組等について
過去の委員会で,委員から,医事関係訴訟の実情に関する情報が本委員会に十分に提供されていない旨の指摘があったことから,情報提供という趣旨で,オブザーバーである東京地裁判事と大阪地裁判事から,各医療集中部における取組について,報告がされた。
(9)次回以降の委員会の日程確認等
次回の委員会及び鑑定人等候補者選定分科会は平成14年5月16日(木)午後3時から午後5時までであることが確認され,次々回は同年7月に開催することが決定された。
(10)その他
委員長から,平成14年2月26日の日本医学会の評議委員会で本委員会の活動状況等を説明し,協力をお願いしたところ,出席者にはおおむね穏やかに受け止めていただいた旨の報告がされた。