トップ > 各地の裁判所 > 最高裁判所 > 各種委員会 > 医事関係訴訟委員会について > 第6回医事関係訴訟委員会・第4回鑑定人等候補者選定分科会議事要旨
1. 日時
平成14年7月8日(木)午後3時
2. 場所
最高裁判所大会議室
3. 出席者(敬称略)
委員
森 亘,大西勝也,鴨下重彦,川名尚,菊池信男,黒川高秀,木下勝之,杉本恒明,永井多惠子,橋元四郎平,平山正剛,武藤徹一郎(山口武典は欠席)
特別委員
名川弘一,前川和彦,御手洗哲也
オブザーバー
前田順司,山名 学,一宮なほみ
事務局
千葉勝美,林 道晴
4. 議事
(1)開会の宣言
(2)推薦依頼をした事案の経過報告等
ア 事務局から医事関係訴訟懇談会及び本委員会で推薦依頼をした事案について,別添「医事関係訴訟委員会への鑑定人候補者推薦依頼一覧」(PDF:572KB)に基づいて経過報告がなされた。
イ 事務局から,裁判が終了した事案について,前回の委員会での検討を受けて,鑑定人候補者の推薦をいただいた3学会(日本循環器学会,日本消化器病学会,日本心身医学会)及び実際に鑑定人になっていただいた3名に対して,当委員会委員長名で礼状書簡(鑑定人に対してはアンケート用紙も同封)を発出した旨報告がなされた。
(主な発言)
- 裁判が和解により終了した場合,鑑定人の中には,労力を費やした鑑定が結局は意味がなかったのではと考える人もあるとの意見が聞かれるが,いかがか。
- 医事関係訴訟のような複雑な訴訟の場合,鑑定がなければ和解が成立するのは難しいのが実情であり,和解が成立したのは鑑定があったおかげと言っても言い過ぎではないと思う。
(3)本委員会で推薦依頼を行う事案等について
今回,推薦依頼のあった事例8件について,別添「推薦依頼のあった事案等について」(PDF:12KB)のとおり,依頼先学会が選定された。
(4)諮問事項について
ア 論点について
事務局から,前回,配布された「論点一覧(案)」(PDF:7KB)の趣旨説明がなされた。
(主な発言)
<論点の立て方についての質問,意見>
- 鑑定書の評価についても,論点に加えたほうがよいと思う。
※ 事務局から,鑑定書の吟味については,裁判体から終了した事件の鑑定書を取り寄せることを検討している段階であり,今後,鑑定書をどういう形で委員会あるいは学会に還元していくかについて詰めた上で,委員会で取りあげたいと考えている旨,また,その際,鑑定書が和解にどう活かされたかについても示したい旨の説明がされた。
<鑑定手続の改善についての質問,意見>
- 「鑑定手続の改善」に関し,裁判体によっては,現在でも昔ながらの証拠調べや鑑定人尋問がなされていると聞くが,実際はどうか。
※ 事務局から,現在の各庁の実情として報告されているところによれば,運用レベルでかなり改善,工夫がされている旨,また,制度的にも,政府の法制審議会民事・人事訴訟法部会で,鑑定手続の改善について前向きな検討がされている旨の説明がなされた。 - 鑑定書の評価については,医師側からの視点と裁判官からの視点の双方からされる必要があると思われる。
- 鑑定書の公表については,当事者の事前の同意を得,またプライバシー問題が生じないような形に工夫すれば問題はないように思う。
<医学界と法曹界との相互理解等についての質問,意見>
- 論点一覧(案)に「地域ネットワーク作り」とあるが,これには各地域で鑑定人を探しやすいシステムを作ることも含まれているのか。
※ 事務局から,「地域ネットワーク」という言葉は,医療機関と法曹界が意見交換をして相互理解を図るという趣旨で使っている旨説明がなされた。 - 鑑定人尋問の在り方等については,実際上,個々の裁判ごとに異なっている。詰まるところ,これは個々の裁判官や弁護士自身の認識の問題であり,裁判官や弁護士一人一人がそれなりの教養と共に問題意識を持っていなければうまくいくはずのないところである。その意味でも,各地域で医療機関,裁判所及び弁護士が相互に理解し合うための場を持つことは,とても意味のあることだと思う。
- お互い特殊な専門用語を使う医療界と法曹界がお互いに相互理解の輪を広げる場を持つことは,とても有益なことだと思うし,これについては医師のみならず看護師や医療スタッフ等も含めて考えていただきたいところである。なお,「地域ネットワーク」という言葉であるが,「リンクス」等の別の言葉のほうが意味的に合うように思う。
- 医療界と法曹界の相互理解はもちろん重要であるが,相互利益ということについても考えていただきたい。医療機関側が裁判に貢献するのと同様に,法曹界も医療界に何らかの利益をもたらすような貢献を考えていただきたいところである。
- 鑑定人候補者の推薦依頼文書の中には「大学病院に頼んだが応答すらなかった」旨記載されたものがあったが,そもそも頼み方にも問題があったのかもしれない。
- 医療界と法曹界が交流を深めるのはいいことであるが,やはり一定の緊張関係は両者の間にあったほうが良いと思う。
- 民事局で作成中のパンフレット「これからの医療訴訟」については,完成後,「学会に対するPR方法」の一環として,既に協力している学会へはもちろんのこと,協力していない学会へも送付していただきたい。
※ 事務局から,本日配布したパンフレット「これからの医療訴訟」については,9月以降に出来上がる予定である旨,各学会に配布できるだけの印刷部数も確保したい旨,説明がなされた。
イ 争点整理について
東京地方裁判所医療集中部の裁判官(オブザーバー参加)から,医療訴訟において争点整理が具体的にどのように行われていくかについて,実際のケースを題材に説明がなされた。
ウ 専門調停について
千葉地方裁判所医療集中部の裁判官(オブザーバー参加)から,専門調停手続の活用の実情について,実際のケースを題材に説明がなされた。
(委員による主な発言)
- 専門家調停委員を選ぶ際,どういった点に配慮したか。
※ 千葉地方裁判所医療集中部の裁判官から,スタンスとして,カルテ,検査結果等のデータの見方等基本的なことをサポートしていただければとの趣旨でお願いしているため,必ずしも細かい専門領域にはこだわらない。こうした視点の下に調停に付す事件を選別して,それぞれの目的に沿った範囲で専門家(医師)の調停委員を選んでいるというのが実情である旨,説明がなされた。
(5)次回以降の委員会の日程確認等
次回の委員会及び鑑定人等候補者選定分科会は平成14年10月31日(木)午後3時から午後5時までであることが確認され,次々回は平成15年1月又は2月頃に開催することが決定された。