トップ > 各地の裁判所 > 最高裁判所 > 各種委員会 > 医事関係訴訟委員会について > 第13回医事関係訴訟委員会・第11回鑑定人等候補者選定分科会議事要旨
1. 日時
平成16年7月6日(月)午後1時
2. 場所
最高裁判所中会議室(2階)
3. 出席者(敬称略)
委員
森 亘,大西勝也,鴨下重彦,菊池信男,木下勝之,杉本恒明,永井多惠子,橋元四郎平,平山正剛,山口武典(川名尚,武藤徹一郎は欠席)
特別委員
名川弘一,前川和彦,(御手洗哲也は欠席)
オブザーバー
貝阿彌誠,中本敏嗣
事務局
園尾隆司,菅野雅之,小林宏司
4. 議事
(1)開会の宣言
(2)平成15年医事関係統計の報告
事務局から,平成15年の医事関係統計の報告が行われた。
(主な発言)
- 医事関係訴訟事件は,今後さらに増加すると思われることから,どのように解決していくかについて,より検討しなければいけないと思う。
(3)改正民事訴訟法の施行状況について
事務局から,鑑定手続の改善等を行った改正民事訴訟法が平成16年4月1日から施行されたこと及び医事関係の専門委員任命状況等が報告された。
(4)推薦依頼をした事案の経過報告等
ア 「医事関係訴訟委員会における,鑑定人及び裁判所に対するアンケートの結果について」を法律雑誌に掲載したことの報告等
事務局から,平成13年7月の委員会設置から平成15年12月末日までに提出された,鑑定人及び裁判所に対するアンケートの結果を本年4月発行の法律関係雑誌「月刊民事法情報(第211号)」に掲載したことが報告された。また,平成16年1月から平成16年6月末日までに提出された,鑑定人及び裁判所に対するアンケートの結果についても,別添「医事関係訴訟委員会における,鑑定人に対するアンケートの結果について」(PDF:161KB)及び「医事関係訴訟委員会における,裁判所に対するアンケートの結果について」(PDF:89KB)のとおりの報告がされた。
イ 訴訟代理人に対するアンケートの実施及び結果の報告
事務局から,前回の討議の結果を受けて,訴訟代理人に対して,鑑定手続についてのアンケートを実施したこと及びそのアンケート結果について,「医事関係訴訟委員会における,訴訟代理人に対するアンケートの結果について」(PDF:82KB)のとおりの報告がされた。
- 鑑定書の内容について,裁判所や各代理人の間で感想が異なることは,ある程度予想できることであろうから,裁判所が有意義であったという感想であれば,鑑定は成功であろう。
- 鑑定が,医学的によいものであったかどうかという問題もあるのではないか。
- 弁護士の間では,鑑定が一定の医師に集中しがちであるという意見もある。
- 鑑定人となった回数が多くなると問題もあるのではないか。
- 鑑定人がベテランに集中するのではなく,新しい人にも新しい目で鑑定をしてもらいたい。
- 裁判所が鑑定人を探す際には,以前に鑑定をやっていただいた方に対し,再度依頼をすることがある。再度鑑定を依頼するのは,以前の鑑定書の内容とはあまり関係がないと思う。
- 専門領域によっては,医師の数が少ないこともある。また,推薦をするにあたっては,能力,人物,地域等を考慮して候補者を選定するので,鑑定が一定の方に集中するのもやむを得ない面もある。
- 新受事件が増加しているが,平均審理期間は短くなっている。事件が複雑困難でなくなってきているということはないので,本委員会の努力もあって,鑑定手続が円滑にされてきているということもいえるのではないか。
ウ :推薦依頼をした事案の経過報告
事務局から,本委員会から各学会に対して鑑定人推薦依頼をした事案について,別添「医事関係訴訟委員会において推薦依頼をした事案の経過一覧表」(PDF:388KB)に基づき,経過報告が行われた。
(5)推薦依頼について
今回推薦依頼のあった事例10件について,別添「推薦依頼のあった事案等について」(PDF:15KB)のとおり,依頼先学会が選定された。
(6)鑑定人候補者推薦依頼手続等についての意見交換
本委員会から鑑定人候補者推薦依頼を受けた学会が,学会の方針として,複数人での鑑定を行う前提で,複数の鑑定人候補者の推薦を希望する場合に,事務局として,どのように対応するか等について,意見交換が行われた。
(主な発言)
- 4,5名で鑑定をする場合,各鑑定人の位置付けはどうなるのか,例えば,1人が代表者で他は協力者となるのか,それぞれが平等の立場となるのかという問題がある。また,複数人による鑑定だけではなく,その他の問題についても議論し,鑑定人依頼や選任について,標準的な流れを示してはどうか。
- 鑑定の申請者が,複数人による鑑定でよいということであれば,問題はないのではないか。
- 複数人での鑑定を行う場合,鑑定費用が増えるという問題がある。また,複数人で鑑定を行うことの必要性の程度については,基本的に,法律家ではわからないのではないか。
- 複数人による鑑定は,鑑定人の負担を軽くしたうえで,よい鑑定ができるということで行われているのだろう。
- 特に,複数人による鑑定の場合は,鑑定費用について,事前に当事者の了解を得ておくことが必要であろう。当事者は,費用が多くかかったとしても,複数の鑑定人による良質な鑑定書を希望することもあるのではないか。
- 裁判所は,鑑定人の意見が分かれた場合,鑑定書の内容を使いにくいのではないか。
- 鑑定事項について,医学分野の領域の違いがあり,その必要性があるときに,複数人による鑑定が行われることになるのではないか。同じ領域の鑑定事項を単に何人かでチェックすることはないのではないか。
- 複数人による鑑定が,医学分野が異なる医師らによる共同鑑定に限定されず,同一の医学分野の鑑定人がそれぞれ同一の鑑定事項について鑑定をすることも差し支えないというのであれば,複数人での鑑定が今後さらに増えるのではないかと思う。
- 鑑定費用の問題が解決できるのであれば,複数人で検討して鑑定をするのはよいことではないかと思う。ただ,鑑定書が複数人の名で提出されるとすると,法廷で話を聞くことがある場合などは,1人に絞るのは難しく,全員から話を聞かなければならなくなることもあるのではないか。
- 鑑定人の間に,主たる鑑定人とその補助者のような関係があったり,医学の専門領域が違ったりする場合は,問題はないだろうと思う。
- 複数人での鑑定に不都合な点はないと考える。鑑定の質を高めることができる。費用については,訴訟や鑑定を行う場合には,通常かかるものであると考えられないか。鑑定人の意見が分かれることについては,当然にありえることで,どの意見を採用するかは裁判所の問題であろう。
- 各裁判所に,複数の鑑定人による鑑定の方法についての情報を提供するなどして,どのような鑑定方法を採るかは,それぞれに判断してもらえばよいのではないか。
- カンファレンス方式のようなものも,鑑定の一つの在り方として考えられるのではないか。
- 鑑定人の意見が分かれた場合,普通の人の合理的な思考によっても劣るといえるものは排斥できるであろうが,そうでなければ,裁判所が医学的専門性の観点から鑑定書の優劣をつけることは難しいのではないか。
- 現状では,1人の鑑定人を探すのも困難を伴う場合が少なくないので,複数の鑑定人を探すのはより難しいことが多いのではないか。
- 抽象的に,複数人による鑑定がいいか悪いかということは言えないと思う。
次回までに,事務局において,本委員会における鑑定人推薦依頼手続の方向性について検討し,それを基に,さらに,次回の委員会で検討することとなった。
(7)平成15年度厚生労働科学研究・子ども家庭総合研究事業「小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究」シンポジウムについて
鴨下委員から,前回報告があった,平成16年2月7日に開催された平成15年度第3回シンポジウムについての報告がされた。
(8)次回の委員会の日程等
次回の委員会及び鑑定人等候補者選定分科会は平成16年10月後半から同年11月ころ開催することが決定した。