トップ > 各地の裁判所 > 最高裁判所 > 各種委員会 > 医事関係訴訟委員会について > 第24回医事関係訴訟委員会・第22回鑑定人等候補者選定分科会議事要旨
1. 日時
平成23年12月15日(木) 午後3時
2. 場所
最高裁判所中会議室(2階)
3. 出席者(敬称略)
委員
北山元章,木下勝之,杉本恒明,髙本眞一,中村耕三,永井良三,三羽正人,山口武典[森亘(委員長),川名尚,寺本民生,武藤徹一郎,吉村泰典は欠席]
オブザーバー
高橋譲(東京地裁判事),中村也寸志(大阪地裁判事)
事務局
永野厚郎(民事局長),朝倉佳秀(民事局第一課長),岡崎克彦(民事局第二課長)
4. 議事
(1) 開会の宣言
(2) 委員の任命等について
ア 委員長代理の指名について
事務局から,御逝去された鴨下重彦委員長代理の後任には,委員長の指名に基づき杉本委員が就任したことが報告された。
イ 新たに任命された委員の紹介
事務局から,10月17日付けで髙本委員,寺本委員,中村委員,永井委員及び吉村委員が就任した旨が報告された。
ウ 委員の再任
委員の再任の回数に上限を設けることについては,複数の委員からもその必要性が提起されていたところであり,この度,事務局から案が提示され,委員により了承された。
(3) これまでの委員会の活動について
本委員会のこれまでの活動実績や成果等について,事務局から報告があった。
(4) 鑑定人候補者推薦依頼事務について
事務局から,鑑定人候補者推薦依頼について,手続の流れを中心に説明があり,鑑定人候補者推薦依頼学会の選定については,今後も引き続きすべての医師委員が担当することが確認された。
また,事務局から,推薦依頼事務の機動性を確保し,鑑定人選任までに要する期間の短縮を図るため,これまで年に4回設けていた推薦依頼書の締切日を廃止し,受け付けた事案から,随時,鑑定人推薦依頼先学会の選定手続を開始するという運用を本年9月から開始したことについて報告があった。
(5) 鑑定人候補者推薦依頼をした事案の経過及び推薦依頼先学会選定結果報告
事務局から,本委員会から各学会に対して鑑定人の推薦依頼をした事案について,別添「医事関係訴訟委員会において推薦依頼をした事案の経過一覧表」(PDF:129KB)に基づき経過報告があり,また,前回の報告後,委員会開催日までに推薦依頼をした3件の事案について,別添「推薦依頼のあった事案の概要等」(PDF:10KB)のとおり,推薦依頼先学会が選定された旨の報告があった。
(6) 医療訴訟連絡協議会・医事関係訴訟事件の状況等について
ア 医療訴訟連絡協議会等の開催結果の報告
事務局から,各地方裁判所において開催されている医療訴訟連絡協議会や医療訴訟ガイダンス等,医療の専門家と法曹関係者の意見交換の取組につき,平成23年1月から6月までの間の開催結果について報告があった。
イ 平成23年(1月~9月(の医事関係訴訟統計について
事務局から,平成23年(1月~9月)の医事関係訴訟事件の最新の動向について説明があった。
ウ 地方裁判所における医事関係訴訟事件の状況について
事務局から,地方裁判所における医事関係訴訟の状況について,全国,医療集中部設置本庁,医療集中部非設置本庁ごとの統計情報に基づき説明があり,医療集中部設置本庁においては,非設置本庁に比べ,平均審理期間が約9か月短くなっているとの説明があった。また,専門委員が関与した事件の審理状況について,専門委員が関与した事件では,関与していない事件に比べ,和解で終局する割合が高く,特に和解手続に関与した場合には,85.7%と高い割合になるとの説明があった。
エ 専門委員制度の活用に関するアンケート結果について
事務局から,本年8月に,全国の地方裁判所の裁判官各1名が代表して回答した専門委員制度の活用に関するアンケート結果のうち,医事関係訴訟に関する部分の説明があった。専門委員制度を活用した理由として,(1)「高度な専門的知見が求められる事案であり,専門委員の活用が有効であると思われた」,(2)「専門委員の関与のもとで,争点整理を行い,鑑定の要否を判断したり,鑑定の方向等について助言を受けたりするために,専門委員を選任した。」との回答が多かったとの説明があった。
(主な意見)
- 医事関係訴訟事件の新受件数は平成18年をピークに減少傾向にあるとの説明があったが,広く医事関係紛争全体を見た場合には,紛争の数自体は減っていないのではないか。近年,ADRが充実し,ADRにより解決される紛争が増えてきていることも訴訟の件数を減らす一つの要因になっているのではないか。
- 認容率が減少傾向にあるという説明があったが,ADRでは解決できなかったような事案が訴訟に持ち込まれ,訴訟における認容率が下がってきたということが推測できるのではないか。
- 医事関係紛争を解決するためには,まずは,徹底した原因究明が必要である。「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」は,医療事故の原因究明と再発防止を目的に,平成17年に日本内科学会が運営主体となり,厚生労働省の補助金事業として開始され,現在までに,160ほどの事例を受け付けている。調査を行うことにより事故の原因が判明し,病院側は責任があればそれを認め,患者側も原因がわかることで納得するケースが多い。この調査の結果により,民事訴訟となったものは160事例のうち2事例ほどであり,ほとんどの事例で示談が成立している。
(7) 「意見交換会」の実施について
前回の委員会(第23回)において,「意見交換会」を実施することについて了解が得られているが,この度,事務局から,その実施方法やテーマに関して具体的な案が提示された。最初のテーマは,「医療紛争における裁判外紛争解決システムの現状と課題」とし,今後,1年の間に3回程度行っていくこと,また,第1回目は平成24年3月頃を予定し,「医療ADRの現状及び課題」について意見交換を行うことが事務局から提案され,委員により了承された。
(主な意見)
- 医療ADRをテーマにすることについては,方向性としてはよいと思うが,患者が死亡したようなケースであれば,客観的かつ正確な説明をしないと患者側は納得しないだろう。ADRの前段階として,可能な限り死因究明を行う必要があり,徹底的に原因究明がなされれば,患者側も納得し,訴訟にまで発展することは少ないのではないか。
- ADRで解決できなかった事案には,必ずその理由があるはずで,どのような問題があるのかということを明確にする必要がある。そして,その前の段階として,専門家である医師が対応する死因究明の仕組みが必要であると思うので,そのような大きな視点で議論を行っていくことがよいのではないか。
- 医療ADRに熱心な弁護士と,患者や医療機関側に付いて弁護する立場の弁護士とでは,医療ADRに対する意見が大きく違っていると聞く。熱心な方は当然,推進すべきと言っているが,今まで代理人として事件を手がけていた人の中には,消極的な人もいるという。医療ADRについてどのように考えているか,弁護士側からも意見を聞いて進めた方がいいのではないか。
- ADRの形態には,特定の形があるわけでなく,医師が入るものから,そうでないものまで様々なものがある。そういった意味では,どういうADRがうまく機能するのか,医師の側から見た場合,どういったものが望ましいのか,また,利用する代理人の側から見た問題点といったことも勘案し,多角的に見ていかなければならない。
- ADRの制度自体が発展途上にあり,医療紛争に限っては,さらに発展途上にあるというところがある。
- 死亡事故のようなケースの場合,客観的かつ正確に説明しないと患者側は納得しない。それが第一であり,丁寧に対応するといったことも大事だと思うが,基本的には正確な情報を提供するということからまずは始まるのだろう。
- ADRには様々なレベルや内容のものがあり,説明をすれば納得を得られるようなレベルのものもあれば,賠償金が求められ,保険会社が関与してくる場合もあるが,お互いの弁護士が折り合っても,保険会社が支払わないというケースもあり,賠償金を支払うとなるとまた大きな問題がある。そして,刑事罰になるような死亡事故のようなケースになると,さらに大きな話になり,話し合いだけで解決することはできないだろう。
(8) 次回の予定等について
第1回意見交換会は,平成24年3月頃を予定しており,次回の本委員会の開催日時は,第1回意見交換会の進捗状況等を踏まえて改めて決定することとなった。