第5 終わりに
日々の裁判が適正に行われるためには,また,そのことについて国民の信頼が十分に確保されるためには,優れた資質・能力 を備えた裁判官が,各裁判所に適切に配置され,意欲を持って職務の遂行に当たることが不可欠である。したがって,裁判官の人事評価制度は,裁判官の資質・ 能力を適正に評価でき,その意欲の向上に資するものでなければならないが,裁判官の職務が多面的かつ総合的な資質・能力を要するものであることに加え,既 に述べたように,評価資料の収集についても,その職務,身分の特性から特別な配慮を要する点があるため,評価の実施にはもともと大きな困難が伴っている。 また,本報告書において,当研究会が提言した裁判官の人事評価制度には,裁判所にとって未経験の全く新たな試みがいくつも含まれている。それだけに,その 制度化や実施の段階においては,様々な問題に直面することが予想される。今後,裁判所において,裁判官の人事評価制度の整備に取り組むに当たっては,その 運用について不断の検証を行うとともに,そこに現れた問題を克服するため叡智をもってかつ柔軟に対応していくことが求められよう。
裁判所においては,当研究会が本報告書で示した考え方を踏まえ,新たな裁判官の人事評価制度を整備するとともに,適正に 人事評価を行い,その結果を適切に人事に反映することによって,裁判官の資質と国民の裁判官に対する信頼とを一層高めていくことに努めるよう期待したい。