1. 日時
平成16年6月10日(木)午前10時
2. 場所
最高裁判所中会議室
3. 出席者(敬称略)
委員
平山善吉
特別委員
大森文彦,坂本 功,関沢勝一,山口昭一,山本康弘
オブザーバー
斎藤賢吉,齋藤 隆,富田善範,田中 敦(鴫原 毅は欠席)
事務局
小林宏司,花村良一
4. 議事
(1) 開会あいさつ
(2) 事務当局者及びオブザーバー交代の報告
(3) 配付資料の説明
「建築関係紛争の分類と対応(案)」(資料1(PDF:256KB)・以下「資料1」という。)について,日本建築学会と東京地裁との間で事前に裁判で問題となる不具合の事象等と建築学上の専門分野の分類との関係について検討した結果をまとめたものである旨の説明がされた。
「鑑定人候補者推薦依頼一覧」(資料2)(PDF:1.5MB)について,前回の委員会以降に推薦を得た事例を追加したことの説明がされた。
(4) 裁判で問題となる不具合の事象等と建築の専門分野との関係について
資料1については,さらに実務レベルで検討を重ね,改善していくことの確認がされた。
(主な発言)
- 資料1は,裁判所が事件を処理するうえで通常どういうことを考慮しながらどういった専門家にお願いするかという思考のパターンが盛り込まれており,使いやすいものになったと考えている。
鑑定人を選任する際,建築学会では候補者を推薦するにあたって資料1の「専門分野」のところを検討することになると思う。「専門分野」のところをもっと具体的にご検討頂ければ,裁判所が調停委員や専門委員を選任する際にもこれらの分類を見ながら対応できるのではないかと考えている。
紛争類型の種別について,部内アンケートを採ったところ,1)追加・変更工事の有無,2)工事金額の積算,3)瑕疵紛争,4)地盤沈下の4つが問題としてあげられた。1)2)については類型化しやすいが,3)は不具合の部位が競合している場合などの問題がある。実際の紛争としては,3)が問題となるケースが多く,建築専門家の意見を求める必要性も高い。また,1)及び2)が問題となる事例も比較的多いが,1)で鑑定まで必要とするケースはさほどない。2)については,出来高の算定など,代金額に直接つながる事柄であり,実務上の需要も多いものと思われる。4)は,事件数としてはさほど多くないものの,建築工事による地盤沈下で近隣建物に損害を与えたケースのように結果が重大なものが含まれており,その実際上の意義は小さくない。 - この資料1を見て,これまで漠然としていたことがわかりやすくなったと思う。また,多岐にわたり汎用性があるので調停委員や専門委員を選任する際にも使えると思う。
大阪では,建築基準法違反はすぐに瑕疵の問題であると主張されることが多いが,その場合「不具合の事象」のどこに該当するのか,また,複合的な瑕疵が例えば100くらいある場合はどうするかが問題となる。さらに大阪では,施主からの損害賠償請求が多く,これをどう考えていくべきか。 - 建築基準法違反は調べていけばこの資料1の中に入っていくと思う。建築基準法の項目を「不具合の原因」と「専門分野」の間に入れてもいいかもしれない。細かい形でこの資料1に建築基準法違反をあてはめるとすれば,中味を見る前に建築基準法違反ということでガイドライン的に出しておいて,その後に中味に入ることになるだろう。建築基準法違反の有無は各項目に一つ縦欄を入れておくのがいいのではないか。
損害賠償については,中味を見ないと分からない。建築基準法に違反しているから結果的に損害賠償という場合もあるだろうし,瑕疵があるから損害賠償,未完成あるいは不法行為があるから損害賠償ということもあろう。
また,「紛争の態様」のところに地盤沈下や元請・下請関係を入れる必要はないだろうか。 - 事件名ですべてが決まるわけではなく,抗弁ででてきたものが実質争点になる場合もある。弁護士の請求のたて方によっても変わってくる。また,関東と関西では考え方が違うので,違った表を使い分けることも考えられよう。
建築基準法違反を資料1に入れるとした場合,項目に追加するのかどうか。そもそも建築基準法違反を入れるとしても何のために入れるのか。建築基準法違反が主張されているか否かにより専門家を絞る際に何か影響が出てくるのか。 - 資料1の個々の項目につき,それぞれ当該事件に該当する事由を選んで組み合せていった場合に,どのような専門分野が関連することになるのかという関連図式を整理したマトリックスをつくることができないか。そのようなものがあれば,裁判所にとっても当事者にとっても,争点整理等をすすめる中で,将来的にどのような専門分野の知識が必要となってくるかの予測・見通しを立てやすくなるのではないか。
- この資料1はほぼできあがっていると思うが,全国の裁判所で使うことができ,さらにマトリックス的分類に仕上げるとなると大変な作業になってくるのではないか。
- この資料1の中で実務上頻繁に生じている組合せだけでも,サンプル的に作ればいいのではないか。細かなマトリックス的分類までは必要ないと思われる。そのようなものを作ったとしても建築工法が変われば時代遅れとなってしまう。典型的なものを念頭において,汎用性の高いものを作る工夫をしたらよいのではないか。
- 瑕疵紛争については今後もっと検討していく必要があろう。
(5) 建築基準法令の実体規定と契約上の瑕疵との関係及び建築物の瑕疵による損害額の算定方法について
(主な発言)
- 損害額をどのように考えるかは難しい問題もある。確かに法律家側としても,どういう形で損害額の算定方法を考えていくかについて,今後,検討していく必要があると思う。
- 委員会の答申として,こういう場合には瑕疵になるとか,こういう場合には損害額がいくらになるかとか,という明確な基準ないしは考え方を示すことは難しいと思われる。ただ,今後,事例が蓄積され,現場での研究が進むことによって参考となる考え方が示されることが望ましいということは,一つのコンセンサスとして紹介できるのではないか。
(6) 広報・PR等について
関沢特別委員より,10月29日に日本建築学会主催の第5回講演会が予定されていること,テーマは戸建住宅についてであることが紹介された。
(主な発言)
- 建築専門家を対象とする紛争を未然に防ぐための警鐘や職業倫理等の情報発信については努力してきているが,一般市民向けの情報発信は難しい。大学での教育プログラムに職業倫理を組み入れていくべきと考えている。また,学会内にも倫理委員会を設置していく予定である。
今後はDVDなどを利用したITによる情報発信を行っていくことになろう。
(7) 今後のスケジュール
次回は,委員会兼分科会として,平成16年10月頃に開催予定とすることが確認された。