トップ > 各地の裁判所 > 東京地方裁判所/東京簡裁以外の都内簡易裁判所 > 裁判手続きを利用する方へ > 借地非訟事件について > 第2 借地非訟事件手続の流れ
1 申立て(手続の開始)
(1) 管轄
- 借地権の目的である土地(借地)の所在地を管轄する地方裁判所です(借地借家法41条本文)。ただし、当事者の合意がある場合は、簡易裁判所に申し立てることができます(同条ただし書)。
- 東京地方裁判所民事第22部は、東京23区内と東京都島しょ部(伊豆諸島、小笠原諸島)に所在する借地の事件を取り扱います。東京都内の上記以外の多摩地区に所在する借地の事件は、東京地方裁判所立川支部民事第4部が取り扱います。
(2) 申立ての方法
- 借地非訟事件の申立ては、申立人が、申立書を管轄裁判所に提出して行います(非訟事件手続法43条1項)。
- 申立てを代理人に依頼する場合、代理人は弁護士に限られます(借地借家法44条1項本文)。
- 申立書の書式は、手続案内の申立て等で使う書式例のページからダウンロードすることができます。
- 申立書の受付は、東京地方裁判所の民事第22部書記官室借地非訟係でおこなっています(ダイヤルイン 3581-5723)。ただし、一般的な法律相談には応じることができませんので、ご了解ください。
(3) 申立時の事務手続
ア 書記官の受付事務
- 書記官が、提出書類を点検し、点検終了後、受付票を申立人に交付します。
- 受付票には、事件番号(「令和5年(借チ)第OOOO号」のように書いてあります。)、当事者の氏名、受付年月日などを書記官が手書きで記載します。また、今後、提出していただく必要のある書面は、書記官が説明します。提出が必要な書面は、できるだけ速やかに提出してください。
- 裁判所に借地非訟事件について問い合わせをする場合には、事件番号を伝えていただけると照会が迅速に進みます。
- なお、書記官が、申立人において行うことの必要な事項を口頭で依頼することもあります。
イ 提出時に必要な書面
申立書の提出時には、以下の書面が必要になります。
- 申立書・・・裁判所用の「正本」(1通)と、相手方用の「副本」(相手方の人数分必要)
〔添付書類〕
- 資格証明書(原本)・・・申立人・相手方が法人である場合
(入手につき不明な点がある場合は、東京法務局(5213-1234)にお問合わせください。) - 委任状・・・弁護士に委任する場合
- 土地固定資産評価証明書(原本)・・・申立手数料の算出資料として必要です。(入手先は、借地の所在地を管轄する都税事務所です。)
- 建物固定資産評価証明書(原本)・・・建物の現況や一応の評価額を確認する資料として必要です。
(入手先は、建物の所在地を管轄する都税事務所です。) - 現場の住宅地図
〔証拠資料〕
- 賃貸借契約書等
詳細は、手続案内の申立て等で使う書式例のページをご覧下さい。書式例とその記載の仕方、申立てに必要な書面が書いてあります。
(4) 申立費用
〔申立手数料〕
- 申立てには、申立手数料が必要です。
- 申立手数料は、収入印紙で納付します。
- 申立手数料額の具体的な算出方法は、「第3 費用」をご覧ください。
〔郵便切手〕
- 当事者に書類を送るための郵便切手をあらかじめ納付することが必要になります。これについても、「第3 費用」をご覧ください。
2 事件の審理
(1) 審問期日(当事者から陳述を聴く手続)
- 裁判所は、申立てを受け、必要書類を点検した上で、概ね1か月から1か月半後の日を第1回審問期日と定め、その日を当事者に通知します。
- 相手方は、第1回審問期日前に申立書に対する応答を記載した答弁書を提出することが必要になります。
- 答弁書の書式は、裁判所が第1回審問期日呼出状、申立書副本などと一緒に相手方に郵便で送りますが、手続案内の申立て等で使う書式例のページからダウンロードすることができます。
- 審問期日は、東京地方裁判所の民事第22部審問室で行います。
- 審問期日では、裁判官が出頭した当事者から意見を聴取します。
- 必要に応じて審問期日を重ねていきます。
- 審問手続は非公開です(非訟事件手続法30条本文)。
(2) 提出書面の交換
借地非訟事件は、借地権という重要な財産に関わる問題なので、申立書、答弁書だけでなく、必要に応じて、準備書面、証拠資料などの提出を求めています。提出された書面は、他方の当事者に送付されます。
(3) 記録の閲覧・謄写
当事者及び利害関係があることを書面によって明らかにできた人は、事件記録の閲覧・謄写等をすることが許されています(借地借家法46条)。
(4) 鑑定委員会制度
ア 鑑定委員会制度とは
- 借地非訟事件の申立てを認めるかどうか、申立てを認める場合に借地権者に対して支払を命じる金銭の額(一般に「建替え承諾料」とか「名義変更料」などといわれています。)や介入権を行使した者に支払を命じる建物及び土地賃借権の適正な対価等がどれくらいかを裁判所が適切に判断するためには、借地関係、不動産の評価等に関する専門的知識を補充したり、民間人の良識を反映させることが必要になります。
そこで、このような知識等を有する人(弁護士、不動産鑑定士及び有識者(建築士を含む。))を鑑定委員として3人以上指定して、公正な立場からの専門的かつ客観的な意見を裁判所が聴くために設けられたのが鑑定委員会制度です。 - 鑑定委員に要する費用は、国が負担するので、当事者は費用が掛かりません。
イ 裁判所の手続
- 裁判所は、申立てについて裁判をする前に、原則として、鑑定委員会の意見を聴くことが必要であり(借地借家法17条6項、18条3項、19条6項、20条2項)、当事者の主張の整理が終了した段階で、鑑定委員会に意見を求める手続を採ります。
- 裁判所は、審問期日で鑑定委員会が現地を調査する日時(当該審問期日から約1か月半程度後)を指定します。鑑定委員会から「意見書」が裁判所に提出されるまでの間は原則として審問期日は開かれません。
- 裁判所は、現地調査が円滑に行われるように、当事者に、鑑定委員用として、裁判所へ提出した主張書面、証拠資料等を各3部ずつ(鑑定委員を3人指定する場合)提出するようお願いしています。
申立人には、このほか、現地周辺の地図の提出をお願いしています。
ウ 鑑定委員会の構成
- 裁判所は、事件ごとに、弁護士、不動産鑑定士及び有識者(建築士を含む。)から当該事件の特色を踏まえて3人以上の鑑定委員を指定します(借地借家法47条1項、2項)。
エ 鑑定委員会の活動
- 鑑定委員会は、現地調査や必要な資料の収集をした上で、裁判所から意見を求められた事項について、3人で評議した結果を「意見書」として、裁判所に提出します。
- 裁判所は、「意見書」の副本を当事者に交付します。
オ 鑑定委員会へ意見を求める内容
求意見事項の例については「求意見事項例(PDF:78KB)」をダウンロードしてご覧ください。
(5) 鑑定委員会からの意見聴取後の審問期日
- 裁判所は、鑑定委員会の「意見書」が裁判所に提出されてから、1か月から1か月半程度で審問期日を開き、当事者から、鑑定委員会の「意見書」についての意見を聴取します(借地非訟事件手続規則8条3項)。
- 裁判所は、当事者に、鑑定委員会の「意見書」に対する意見がある場合には、上記審問期日の前までに、書面で提出するように求めています。
- 裁判所は、当事者の主張立証が終了したところで、手続を終了し、決定をすることになります(非訟事件手続法54条、55条)。
(6) 和解の勧告
裁判所は、第1回審問期日から手続を終了するまでの間に、適宜、当事者に和解による解決を勧めることがあります。借地関係は、継続的な信頼関係に立脚するものですから、なるべく円満な解決が望ましいからです。
3 事件の終了
(1) 取下げ
- 申立人は、原則として、いつでも申立てを取り下げることができ、相手方の同意は必要ありません。ただし、介入権行使の申立てを認める裁判があった場合は、申立人及び相手方は、いずれも、自分の申立てを取り下げるためには、他方の当事者と書面で取下げの合意をすることが必要になります(借地借家法19条5項、20条2項、借地非訟事件手続規則20条)。
- 取下げの手続は、書面のほか審問期日において口頭ですることもできますが(非訟事件手続法63条2項)、実務上は、申立人の意思を明確にするため、取下書を提出してもらっています。
- 第1回審問期日を指定し、相手方に申立書の副本等を送達した後に取り下げる場合には、取下書の正本1通、副本は相手方の人数分を提出してください。
(2) 和解
和解が成立すると、事件は終了し、書記官が和解の内容を和解調書に記載します。なお、和解調書に記載された内容は確定した終局決定と同一の効力が生じます(非訟事件手続法65条2項)。
(3) 調停
借地非訟事件は、申立後も、調停手続で解決を図ることができます(民事調停法20条4項、1項)。調停に付された借地非訟事件について調停が成立した場合、借地非訟事件も終了します(同条4項、2項)。
(4) 決定
- 借地非訟事件の裁判は、決定の形式で行われます(非訟事件手続法54条)。
- 決定は、裁判官が決定書を作成して行います(同法57条)。
- 書記官は、当事者に決定書の正本(写し)を送達します(借地借家法55条1項、借地非訟事件手続規則22条)。
- 申立てが認められた場合の決定主文例については、「決定主文例(PDF:78KB)」をダウンロードしてご覧ください。
4 決定に対する不服申立て(抗告)
- 当事者が、決定に対して不服がある場合、決定書の送達を受けた日から2週間以内に、即時抗告をすることができます(非訟事件手続法66条,67条1項,2項)。
- 即時抗告は、決定をした裁判所に抗告状を提出して行います(同法68条)。東京地方裁判所の場合には、14階の民事訟廷事件第一係に提出することになります。
- 上記の期間内に即時抗告の提起があれば、決定は確定しません。
- 即時抗告に対する裁判は、高等裁判所が担当します。