所在不明株主の株式売却許可申立事件についてのQ&A

1.所在不明株主の株式売却許可申立事件とは?
 長期間通知等が到達せず所在不明となっている株主が保有する株式等は,競売により売却することができますが,市場価格のない株式については,裁判所の許可を得ることで,競売以外の方法により売却することもできます。裁判所に対して,この許可を求める申立てが「所在不明株主の株式売却許可申立事件」です。
 以下の①~⑤の要件が備わったときは,株式会社は,裁判所の許可を得て,当該株式の売却の許可を求めることができます。
 なお,中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「経営承継円滑化法」という。)に基づく都道府県知事の認定を受けた中小企業に関する特例については,Q5を参照してください。
  • ① 対象株式が次のいずれにも該当すること(会社法197条1項1号,2号)

     ㋐ 対象株式の株主に対して会社法196条1項(会社が株主に対してする通知又は催告が,5年以上
      継続して到達しない場合)又は294条2項(会社に対し無記名式の新株予約権証券が提出されない
      場合)の規定により通知及び催告をすることを要しないものであること

     ㋑ 対象株式の株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったものであること(配当をしていな
      い事業年度が含まれる場合は,当該事業年度に配当をしなかったこと)

  • ② 対象株式が,競売以外の方法による売却を相当とし,かつ,市場価格のないものであること
                                    (会社法197条2項前段)
  • ③ 申立人が,対象株式の株主その他の利害関係人が一定の期間内(3か月を下ることができない。)に異議を述べることができる旨その他法務省令で定める事項を公告し,かつ,対象株式の株主及びその登録株式質権者に各別に催告したこと(会社法198条1項)。上記の期間内に利害関係人が異議を述べなかったこと
  • ④ 申立人が対象株式を買い取る場合には,申立人が会社法197条3項に掲げる事項を定めたこと
      (取締役会設置会社においては取締役会決議によって定めたこと。会社法197条4項)
  • ⑤ 対象株式の売却価格が相当であること
2.申立ての手続はどのようにするのですか?
1 申立人その株式を発行した株式会社です。取締役が2名以上いるときは,取締役全員の同意が必要です。
2 申立手数料収入印紙1000円です(民事訴訟費用等に関する法律3条1項,別表第1の16項)。
申立書に貼付してください。割印はしないでください。
3 郵便切手決定謄本を裁判所の窓口で受領する場合は不要です。
決定謄本を郵送にて受領したい場合のみ,郵便切手が必要になります。
4 管轄東京都の区部(23区)及び島しょ部(伊豆諸島・小笠原諸島)に本店所在地がある株式会社は,東京地方裁判所です。
それ以外の東京都の地域に本店所在地があるときは,
東京地方裁判所立川支部(〒190-8571 東京都立川市緑町10番地の4)に申立てをしてください。
3.申立ての際に,注意すべき点は何ですか?
次の①~⑦の事実の疎明,競売に代えて売却することの相当性,売却価格の相当性といった点に注意して,申立書及び添付書類を提出してください。
なお,『5年間継続して到達しなかった』事実の疎明は重要であり,当庁では,(代表)取締役の陳述書などの代替書面による疎明は認めていませんので,必ず6年分の返戻封筒を疎明資料として提出してください。
  • ① 株主名簿に記載又は記録した当該株主の住所(当該株主が,別に通知・催告を受ける場所・連絡先を当該株式会社に通知した場合は,その場所又は連絡先)に対して発した通知及び催告が継続して5年間到達していないこと
  • ② 当該株式について,当該株主が,継続して5年間株式会社が配当した剰余金を上記①の住所,場所又は連絡先において受領していないこと
  • ③ (取締役会設置会社で株式会社が買い取る場合は)株式買取について,取締役会決議をしたこと
  • ④ 株式売却について,会社法198条1項所定((1)当該株主及びその他利害関係人が一定の期間内に異議を述べることができる旨,(2)会社法施行規則39条で定める事項)の公告をしたこと
  • ⑤ 当該株主に対して,株式を売却する旨及び異議を述べることができる旨の催告をしたこと
  • ⑥ 当該株式について,市場価格がないこと
  • ⑦ (申立人以外の者が買い取る場合は)当該株式について,買受人がいること

* 会社法施行規則39条(略)
1号競売対象株式について,競売又は売却をする旨
2号競売対象株式の株主として株主名簿に記載又は記録がされた者の氏名又は名称及び住所
3号競売対象株式の数(種類株式発行会社にあっては,競売対象株式の種類及び種類ごとの数)
4号競売対象株式につき株券が発行されているときは,当該株券の番号

4.どのような疎明資料が必要ですか?
例として以下のような疎明資料があります。事案によっては,ここに記載された疎明資料のほかにも,提出を求めることがあります。

疎明資料例

申立てに関する基礎的資料
申立人の履歴事項全部証明書,(取締役が2名以上いるときは)当該申立てをすることについての全取締役の同意書
Q3の①,②に関するもの
株主名簿,6年分の対象株式の株主に対する株主総会招集通知書,株主総会決議通知書,剰余金配当送金通知書,それらの返戻封筒
Q3の③に関するもの
会社法197条3項の事項の決議をしたことの取締役会議事録
Q3の④に関するもの
会社法198条1項に係る官報(公告)
Q3の⑤に関するもの
催告書及びそれを発出したことが判る資料
Q3の⑥に関するもの
株価算定書,申立人の履歴事項全部証明書(株式の譲渡制限に関する規定について記載のあるもの)
Q3の⑦に関するもの
買取書
5 経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けた中小企業については,どのような特例がありますか?
 都道府県知事から経営承継円滑化法12条1項1号ホの認定を受けた中小企業については,Q1記載の要件①㋐㋑の「5年」を「1年」と読み替え,株主が1年以上継続して所在不明な場合に株式売却許可申立てをすることができるとの特例が適用されます(この特例の適用を受ける株式を「特例対象株式」という。)。
 この都道府県知事の認定を受ける手続については,中小企業庁のホームページを参照するか,都道府県の担当部署等にお問い合わせください。

 都道府県知事の認定を受けた上,特例対象株式についての株式売却許可を申し立てる場合(この申立てを「特例による申立て」という。)は,都道府県知事の認定を受けたことを裏付ける資料(認定書等)を提出してください。なお,特例による申立ては,都道府県知事の認定を受けてから2年以内にすることが必要です(経営承継円滑化法施行規則8条9項)。
 また,特例による申立てをするためには,Q3の④⑤の公告及び催告に先立ち,特例措置によることを明示して,特例対象株式の株主その他の利害関係人が一定の期間内に異議を述べることができる旨及び経営承継円滑化法施行規則15条の2で定める事項を公告し,かつ,特例対象株式の株主及びその登録株式質権者に各別に催告しなければならない(経営承継円滑化法15条2項)ので,この公告に関する資料(官報等),催告書及びその返戻封筒も提出してください。なお,この公告・催告に対して所定の期間内に利害関係人が異議を述べたり,上記催告が特例対象株式の株主等に到達したりした場合は,特例による申立てはできません(同条3項2,3号)。

* 経営承継円滑化法施行規則15条の2(略)
1号特例対象株式の競売又は売却をする旨
2号特例対象株式の株主として株主名簿に記載又は記録がされた者の氏名又は名称及び住所
3号特例対象株式の数(種類株式発行会社にあっては、特例対象株式の種類及び種類ごとの数)
4号特例対象株式につき株券が発行されているときは、当該株券の番号

 特例による申立てが認められる場合は,Q3の①②の「5年間」を「1年間」と読み替えることになりますので,資料として提出する過去の株主総会招集通知書,株主総会決議通知書,剰余金配当送金通知書及びそれらの返戻封筒は,6年分ではなく,2年分となります。

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