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第8回建築関係訴訟委員会及び第14回建築関係訴訟委員会分科会議事要旨

1. 日時

平成16年11月25日(木)午後3時

2. 場所

最高裁判所中会議室

3. 出席者(敬称略)

委員

内田祥哉,尾崎行信,可部恒雄,鈴木誠,畑郁夫,平山善吉,松本光平,
安岡正人(秋山宏,上谷宏二,岡田恒男,仙田満は欠席)

特別委員

坂本功,関沢勝一,山本康弘(大森文彦,山口昭一は欠席)

オブザーバー

斎藤賢吉,鴫原毅,齋藤隆,富田善範,田中敦

事務局

高橋利文,菅野雅之,小林宏司,花村良一

4. 議事

(1) 開会の宣言

(2) 委員等の任免について

浜美枝委員が任期満了に伴い退任されたことが報告された。

(3) 事務当局者及びオブザーバー交代の報告

(4) 配付資料の説明

 「第12回及び第13回分科会の主な審議内容(議事録より抜粋)」(資料1)について,本日審議する際の資料であり,これまでの発言等を議事録から抜粋したものである旨の説明がされた。
 「建築訴訟委員会答申項目(案)」(資料2)(PDF:23KB)について,来年6月に委員の二期目の任期が満了することに伴い,これまで委員会で議論してきたことを答申という形で取りまとめるにあたり,事務局においてその項目案を作成したものである旨の説明がされた。
 「鑑定人候補者推薦依頼一覧」(資料3)(PDF:52KB)について,前回の分科会以降に新たにされた推薦依頼等を踏まえたものである旨の説明がされた。
 「紛争類型の種別」(資料4)(PDF:108KB)について,資料1添付の「建築関係紛争の分類と対応(案)」(以下,「分類表」という。)の対応例として東京地裁において作成したものである旨の説明がされた。

(5) 日本建築学会第5回講演会の報告

関沢特別委員から,本年10月29日に開催された日本建築学会主催の第5回講演会「建築紛争の現状と課題-戸建住宅を巡る建築訴訟の現状-」についての概要が報告された。

(6) 第12回及び第13回分科会での審議の結果について

平山委員から,分科会での審議の結果が報告され,その各項目についての議論がされた。

ア 鑑定人候補者推薦依頼を円滑に行うための方策について

 裁判で問題となる建築の不具合の事象等と建築学上の専門分野との関係を明らかにする作業は,建築界側が適切な鑑定人候補者を推薦するために重要であること,裁判所側が事案に相応しい鑑定人の専門分野や人数等につき事前に見通しを立てるために重要であること,不具合の事象等と建築学上の専門分野の関係を具体的に明らかにする作業については,日本建築学会と東京地裁との協働作業で一定の成果物ができており,これが補助資料として有益と考えられること,今後さらにこうした資料等をベースに建築界と司法界が協働して実務家レベルで作業を継続し,いっそう使い勝手のよいものにしていくことが望ましいことについて了承が得られた。

(主な発言)

  • 建築学会側の専門分野の分類は,必ずしも裁判の実際に対応したものではないので,裁判にも対応した分類が必要である。実際の裁判でこの分類表を用いて,調停委員や専門委員を選任した。本日現在で東京地裁において専門委員を指定した事件は67件あるが,そのうち26件が建築関係紛争事件であり,一般事件でも建築専門家を専門委員に指定した事件が2件あった。
  • 建築基準法違反の項目については,建築の専門分野の分類を考える上でその項目を分類表に盛り込むまでの必要はないのではないかという意見が,分科会では多かった。
  • 地域によっては,問題となることが多い紛争の態様等が異なるものと考えられることから,この分類表を使用するに当たっては,地域によって修正をする必要がでてくるのではないか。
  • 分類表の不具合の事象欄に材寸,品等の項目を追加してほしい。
  • 建築界側,司法界側それぞれの立場で考え方が違うので項目の詳細については今後すりあわせをしてよりよいものに改訂していくことになる。
  • 専門分野は多岐に渡るので,どれとどれが関連しやすいのか,あるいはどの専門家に頼めばいいのかが分かるような組合せ例があった方がいいのではないか。
  • 詳細な分類のすべての組合せを考えるとなるとその類型は膨大な数になってくる。しかし,裁判の実際では必要な類型は絞られてくると思う。したがって,典型的な類型だけを押さえ,必要な類型だけでも示せれば他の裁判所でも有効に活用できるのではないか。
  • 東京地裁の部内でアンケートを採り,分類表を基に,実際の事例として多く見られる組合せの例として資料4を作成した。
イ 広報・PR等について

 建築関係事件の運営に関する事項を調査審議するという当委員会の性格に照らしても,個別的な広報・PR等の具体的な方法やあり方について,委員会として一定の方向で意見をまとめたり,具体的な広報活動を行うことは困難であると考えられること,ただし,建築トラブルに対する社会の関心の高まりから,今後も紛争予防のための十分な情報発信を行っていくことが重要であること,具体的には,現在建築界において,裁判所等の協力も得つつ行われている講演会,勉強会の開催等の取組みを継続,発展させることが欠かせないことについて了承が得られた。

(主な発言)

  • 日本建築学会での取組としては,次の点を考えている。まず,司法支援建築会議の会員の構成の見直しと拡充を考えており,裁判で問題となる専門分野の分類を意識した上で会員の構成を再分類していきたいと考えている。また,積極的な情報発信も重要である。消費者に対しては,契約文書の必要性,個別契約での留意点等を,専門家に対しては,分析結果をまとめて紛争未然防止の啓蒙をしていきたいと考えている。さらに,ITを活用し,シンポジウムや講演会の様子をDVDに収録し,例えば学会の各支部における講演会等で上映できるような教材作りをしていこうと考えている。また,今年8月,学会に常設の倫理委員会が設置されたが,今後は,司法支援建築会議とこの倫理委員会が車の両輪となって一般社会へ情報発信をしていくことになろう。
ウ 建築基準法令の実体規定と契約上の瑕疵との関係及び建築物の瑕疵による損害額の算定方法について

 実体法規の解釈に関わる問題については,個別的な問題でもあり,分科会での議論のとおり,委員会や分科会で議論することが難しい側面があり,委員会として明確な基準ないし考え方を示すことは困難と思われること,ただし,今後,裁判実務の中で事例が蓄積され,実務での研究が進むことによって指針となるような考え方が示されることが望ましいことについて了承が得られた。

(主な発言)

  • 建築基準法で定められた基準より太い柱,厚い壁を使用して建設する旨の契約がされたが,業者がその契約を守らなかった場合,それが瑕疵になるかが争われた事案で,最高裁は,約定に違反した場合は瑕疵にあたると判示した事例があった。
  • 瑕疵を認定しても損害額をどうするかという問題がある。例えば瑕疵があるためすべて建直しをしなくてはならないというときに,その費用を全額認めるのかという問題がある。この件につき,最高裁の判例ではあまりにひどいときは全額認めるというものがあるが,グレーゾーンのときは判断が難しい。

(7) 答申項目(案)について

答申項目案について,おおむね了承が得られ,本日の議論や意見を踏まえ答申案のたたき台を作成していくこととされた。

(主な発言)

  • 契約書を綿密に作成しても専門家でない者には理解しづらいので,専門家側の誠実な説明義務が重要になってくるのであり,この点を答申に入れたらどうか。
  • 築家の義務として最低限,建築基準法は守るべきである。そのことを答申に盛り込んでもらいたい。
  • 建築基準法の遵守は一般論として重要であることは間違いないが,紛争解決のための実際の裁判では,建築基準法違反があった場合でも,契約内容その他の個別事情によっては,必ずしも瑕疵があるものとして扱われるわけではない。
  • 答申項目案にもあるとおり,これからはいかに紛争を未然に防止するかが重要である。

(8) 今後のスケジュール

次回は,委員会兼分科会として,平成17年2月下旬から同年3月上旬頃に開催予定とすることが確認された。

※ その後の期日調整の結果,第9回委員会及び第15回分科会は,平成17年3月4日(金)午後3時から開催することとなった。

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