裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和55(あ)1499
- 事件名
公正証書原本不実記載、同行使
- 裁判年月日
昭和56年7月14日
- 法廷名
最高裁判所第三小法廷
- 裁判種別
決定
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第35巻5号497頁
- 原審裁判所名
大阪高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和55年8月28日
- 判示事項
一 訴因の特定が十分でない起訴状による公訴提起と公訴時効停止の効力
二 二個の事実のいずれに対する起訴であるのか一見まぎらわしく訴因の特定が十分でない起訴状による公訴提起が一方の事実に関する公訴時効停止の効力を有するとされた事例
三 再起訴に対する判断が旧起訴に対する確定判決のいわゆる内容的確定力に抵触しないとされた事例
(三につき反対意見がある)
- 裁判要旨
一 公訴事実の記載に不備があつて、実体審理を継続するのに十分な程度に訴因が特定していない起訴状による公訴提起であつても、それが特定の事実について検察官が訴追意思を表明したものと認められるときは、右事実と公訴事実を同一にする範囲において、公訴時効の進行を停止する効力を有する。
二 建物の所有名義を偽つて不実の登記をさせたことなどを内容とする公正証書原本不実記載・同行使の旧起訴状公訴事実の記載に不備があつて、旧起訴が、右建物の表示登記と保存登記のいずれの不実記載についてされたのか一見まぎらわしく訴因の特定が十分でない場合であつても、旧起訴状の公訴事実に記載された犯行の日時、場所、方法及び不実登記の対象となる建物がすべて表示登記の不実記載に関する本件公訴事実第一のそれと同一であることなどの事情があるときは(判文参照)、右旧起訴は、本件公訴事実第一につき公訴時効の進行を停止する効力を有する。
三 訴因の不特定を理由とする公訴棄却の確定判決が、右判断を導くための根拠の一つとして、旧起訴状の公訴事実によつては併合罪関係に立つ建物の表示登記と保存登記に関する各公正証書原本不実記載・同行使罪のいずれについて起訴がされたのか一見明らかでないという趣旨に解しうる判断を示している場合において、再起訴を審理する裁判所が、旧起訴により表示登記の不実記載に関する本件公訴事実第一につき公訴時効の進行が停止されたと判断することは、右確定判決のいわゆる内容的確定力に抵触しない。
- 参照法条
刑訴法254条1項,刑訴法256条3項,刑訴法338条4号
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