裁判例検索

裁判例結果詳細

最高裁判所判例集

事件番号

 昭和23(れ)468

事件名

 国家総動員法違反、食糧管理法違反

裁判年月日

 昭和23年10月9日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第2巻11号1297頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和22年12月27日

判示事項

 一 食糧管理法違反行爲と國家總動員法違反行爲との連續犯の成否
二 併合罪中の一罪について大赦ありたる場合の裁判
三 各別に代價を定めた別個の行爲と數罪倶發の關係
四 公訴繋屬中の事件に對し大赦があつた場合の實體的審理の可否
五 連續犯として起訴され併合罪と認定されたものにつき大赦があつた場合判決の主文において免訴の言渡をすることの正否

裁判要旨

 一 食糧管理法は主要食糧の確保を主目的として需給の圓滑、價格の公正を圖らんとするに對し、國家總動員法第一九條(これに基く價格統制令)は、國家總動員上の特殊の必要に基き諸物價を統制せんことを主眼とするものであつて、二者その立法の目的と適用範圍を異にするは勿論、價格に關する規定についても各その性格を異にする。故にこれら二法令に違反する行爲は、その罪質を同じくするものということはできない。從つて本件の食糧管理法違反の行爲と國家總動員法違反の行爲は價格超過行爲なる點において類似はしているものの、二者その罪質を異にするから、たとえ連續して爲されたとしても、連續犯とはなり得ず、併合罪の關係に立つものと認めるの外はない。
二 所論は要するに、右の異つた罪質の各行爲が連續犯となるとの前提に立つて事を論ずるものであるが、既にこれを併合罪と認めねばならぬ以上そのうち大赦令によつて赦免せらるべき国家總動員法違反の行爲を免訴とするのは當然である。
三 本件小麥粉の超過販賣行爲と白鹽等の超過販賣行爲はいずれも各別に代價を定めた別個獨立のものであることは明瞭であつて、所論のようにこれを包括的な一個の行爲とし、數罪倶發の關係に立つものと認めることはできない。
四 公訴繋屬中の事件に對し大赦があつたときは、裁判所は單に免訴の判決をすべく、公訴事實の存否又は犯罪の成否等について實體上の審判を行うべきでないことは常裁判所の判例とするところであるから(昭和二二年(れ)第七三號同二三年五月二六日大法廷判決)大赦令によつて赦免をせらるべき本件白鹽等の超過販賣行爲が所論の如く他の小麥粉の超過販賣行爲と共に包括的な一行爲を以て爲されたか否か等事案の實體に亘る事項はこれを起訴状の記載自體によつて決するの外なく、實體的な審理によつて認定すべき限りでない。
五 右の行為(白鹽等の超過販賣行爲)は他の小麥粉の超過販賣行爲と連續犯の關係に立つものとして起訴されたものと認むべきであるから、主文において免訴の言渡を爲さなかつた原判決は正當である。

参照法条

 刑法55條,刑法45條,刑法54條,刑訴法363條3號

全文