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最高裁判所判例集

事件番号

 平成30(行ケ)10059

事件名

 審決取消請求事件

裁判年月日

 平成31年1月29日

法廷名

 知的財産高等裁判所

裁判種別

結果

判例集等巻・号・頁

原審裁判所名

原審事件番号

原審裁判年月日

判示事項

裁判要旨

 商 判決年月日 平成31年1月29日
標 知財高裁第2部
権 事 件 番 号 平成30年(行ケ)第10059号
○ 「QR コード」及び「QR Code」の文字を上下二段に横書きした登録商標
について,同商標の使用の事実が認められるとして,商標法50条1項に基づく商標登
録の取消審判請求を不成立とした審決の取消請求が棄却された事例
(事件類型)審決(不成立)取消 (結論)棄却
(関連条文)商標法50条1項
(関連する権利番号等)取消2015-300818号
判 決 要 旨
1 本件は,別紙1の商標(以下「本件商標」という。)の登録について,商標法50条
1項に基づく商標登録取消審判請求を不成立とした審決の取消訴訟であり,要証期間内に
おける本件商標の使用の事実の有無が争われ,具体的には,主に,①別紙2のうち赤線で
囲まれた部分の商標(以下「使用商標」という。)が,被告主張に係る対象商品であるア
プリケーションソフトウェア(以下「本件商品」という。)について,自他商品等の識別
機能を発揮する態様で使用されていたか,②使用商標は本件商標と社会通念上同一といえ
るか,③本件商品が商標法上の「商品」に当たるかの点が争われた。
2 本判決は,概略,以下のとおり判示して,原告の請求を棄却した。
(1) 争点①について
「QR Code」及び「QRコード」は,2次元コードの規格の一種であると認識さ
れることがあるものと認められるが,他方,被告は,本件商標登録を有しており,「QR
コードについては(株)デンソーウェーブ の登 録商標です。」と の表 示をしたり,「 ○ 」の

表示を付して,商標登録を有していることを広く知らせており,また,被告以外の会社も,
原告を含め,そのウェブサイトや広告において,「QR Code」又は「QRコード」
が被告の登録商標である旨の表示をしていることを考慮すると,「QR Code」又は
「QRコード」が常に2次元コードの規格の一種であるとのみ認識されると認めることは
できず,自他商品等の識別機能を発揮する態様で使用されることがあり得る。
使用商標は,他の記載とは独立して表示され,また,「Q」の文字の右端の部分と「R」
の文字の左端の部分が重なっており, また,僅かではあるが図形化されており,赤色で表
示されているものであって,単に, 本件商品の説明として記載されているものと認めるこ
とはできないから ,本件商品についての識別標識として記載されているものと認められ,
また,需要者・取引者もそのように認識するものと認められる。
したがって,使用商標は,本件商品についての自他商品等の識別機能を有していると認
められる。
-1-
(2) 争点②について
本件商標と使用商標とは,称呼及び観念において共通する。
両商標の外観を比較すると,使用商標は,本件商標の下段の「QR Code」とは,
同一の文字綴りであり,上段の「QR コード」とは,片仮名及びローマ字の文字表示を
相互に変更するものであり,この点で共通性が認められるが,①本件商標は,「QR コ
ード」及び「QR Code」の標準文字が上下二段に配置されているのに対し, 使用商
標は,「QR Code」のみから構成されている点,② 使用商標 は,「Q」の文字の右
端の部分と「R」の文字の左端の部分が重なっており,同重なり部分が,両文字の一部を
兼ねているように 図形化されている点,③ 使用商標は,赤色で記載されている点で異な
っている。
しかし,「QR コード」は,「QR Code」の「Code」の部分を片仮名にし
たものと理解されるのであり,「QR コード」及び「QR Code」の称呼及び観念
は同一であることからすると,上記①の相違点の存在が, 使用商標 が本件商標と社会通念
上同一といえるか否かの判断に影響を与えるものではないというべきである。
また,「Q」の文字と「R」の文字が重なった部分は僅かであり,双方の文字を独立し
た文字として認識できること,図形化の程度も僅かであることからすると,上 記②の相違
点の存在が, 使用商標 が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの判断に影響を与える
ものではないというべきである。
さらに,商標に色を付けても,通常,商標の同一性を失わせるような変更とは いえない
から,上記③の相違点の存在が, 使用商標が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの
判断に影響を与えるものではないというべきである。
以上からすると,使用商標は本件商標と社会通念上同一であると認められる。
(3) 争点③について
商標法上の商品というためには,商取引の対象となり得ることが必要であり,そのため
には,必ずしも当該商品が有償で譲渡される必要はなく,当該商品自体は無償で譲渡され
るものであっても,当該商品の譲渡によって利益を得る仕組みがあり,その仕組みの一環
として,当該商品が無償で譲渡されるのであれば,当該商品 は交換価値を有し, 商取引の
対象となっていると認めることができるというべきである。
本件商品は,無償でダウンロードできることが認められるが,被告は,訴外会社と共同
で,本件商品を活用したサービスを展開していく計画 を有している ことが認められるとこ
ろ,同サービスを利用するためには,本件商品をスマートフォンにダ ウンロードしておく
必要があるのであるから,本件商品の無償配布は,同サービスの展開 に大きく寄与するも
のと考えられ,したがって,本件商品の無償配布は,本件商品を利用したサービスを提供
し,同サービスの提供によって利益を得るというビジネスモデルの一環としてされたもの
と評価できる。
したがって,本件商品には交換価値があるものと認められ,本件商品は,商取引の対象
-2-
となり得るから,商標法上の「商品」に当たる。
-3-
別紙1
QR コード
QR Code
-4-
別紙2
-5-

参照法条

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