裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成12(行ウ)257
- 事件名
損害賠償(住民訴訟)請求事件
- 裁判年月日
平成14年3月29日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 都の特別区が,総務部総務課長事務取扱者に資金前渡された区長交際費から,助役,収入役,総務部長が購読する政党紙等の購読代金を支出したことにつき,職員の購読契約及び購読代金の支払並びに収入役の前渡金支払清算書等の審査行為が,いずれも財務会計上の行為に当たるとされた事例
2 都の特別区が,総務部総務課長事務取扱者に資金前渡された区長交際費から,助役,収入役,総務部長が購読する政党紙等の購読代金を支出したことが違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,区に代位して,区長個人,総務部総務課長及び収入役に対してした損害賠償請求が,一部認容された事例
- 裁判要旨
1 都の特別区が,総務部総務課長事務取扱者に資金前渡された区長交際費から,助役,収入役,総務部長が購読する政党紙等の購読代金を支出したことにつき,資金前渡として職員に前渡金を交付した段階で支払が完了したものとされる取扱いは会計処理を行う上での便宜のための取扱いとして行われるものにすぎず,資金前渡を受けた職員が行う契約締結等の債務を負担する行為は,同人が資金前渡を受けた趣旨に沿って行う支払の原因となるべき行為であり,資金前渡を受けた職員が行う正当債権者に対する支払は,地方公共団体に対する債権者のためにするものであって,それによって公金性を失わせる行為そのものというべきであるから,地方自治法242条1項所定の住民監査請求に係る規定が地方財務行政の適正な運営の確保を目的とすることにかんがみれば,職員の購読契約及び購読代金の支払は,いずれも同条に基づく住民監査請求の対象となる公金の支出にほかならず,また,会計事務の責任者としての権限を有する収入役は,資金前渡による支出について,同法170条2項6号に基づき,資金前渡を受けた職員が行った債務負担行為を確認する権限を有しているというべきであり,収入役の前渡金支払清算書等の審査行為は,同号にいう「支出負担行為に関する確認を行うこと」に該当する行為であるとして,いずれも財務会計上の行為に当たるとされた事例
2 都の特別区が,総務部総務課長事務取扱者に資金前渡された区長交際費から,助役,収入役,総務部長が購読する政党紙等の購読代金を支出したことが違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,区に代位して,区長個人,総務部総務課長及び収入役に対してした損害賠償請求につき,地方公共団体である特別区も社会的実体を有するものとして活動している以上,特別区の長が,特別区の事務を遂行する過程において,外部の者との間で,社会通念上相当な範囲内の儀礼的行為,接遇,賛助等の交際を行うことは,同事務に随伴するものとして許容されており,その交際に伴って公金の支出が必要となる場合に,交際費として支出を行うことも,社会通念上相当な範囲である限り許されるとした上,区長交際費として資金前渡を受けた総務課長において支出負担行為や支払をすることができるのは,区長交際費という費用の性質上,区長がその事務を遂行するに当たって必要な,交際に要する経費に限られるというべきであるから,助役,収入役,総務部長が読むための新聞に関する前記購読契約及び前記支払は,区長としての交際とは何ら関係はなく,区長交際費として資金前渡された趣旨を逸脱するものであり,違法な財務会計行為であるなどとして,区長個人については予算執行者,支出負担行為及び支出命令の原権限者として,総務部総務課長については資金前渡を受けた職員として,それぞれ支払額の限度で責任を認め,収入役については,専決権限を有する副収入役が審査した時点で支払を終了しているため損害との因果関係がなく,副収入役を監督する収入役についても因果関係がなく責任はないとして,前記請求を一部認容した事例
- 全文