裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成3(行ウ)5
- 事件名
公有水面埋立免許取消請求事件
- 裁判年月日
平成10年3月20日
- 裁判所名
佐賀地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 県知事が県に対してした公有水面埋立免許処分に対する周辺住民,周辺漁民のした同処分の取消請求が,却下された事例 2 公有水面埋立法4条1項2号の趣旨 3 公有水面埋立法5条4号にいう,慣習により公有水面に排水をなす者の意義
- 裁判要旨
1 県知事が県に対してした公有水面埋立免許処分に対する周辺住民,周辺漁民のした同処分の取消請求につき,公有水面埋立法4条1項1号,3号,同法47条2項,同法3条等の規定は専ら一般的な公益を保護する趣旨のものと解するのが相当であり,同人らの有する生活上又は営業上の環境利益,あるいは周辺漁民の有する漁業を営む権利を一般的公益の中に吸収解消されない個別的利益としても具体的に保護すべきものとする趣旨を含むと解することはできないなどとして,同人らの原告適格を否定し,前記取消請求を却下した事例 2 公有水面埋立法4条1項2号は,不特定多数者の生命,身体等の安全を一般的公益として保護しようとするにとどまらず,一般的公益の中に吸収解消し得ないものとして,災害防止につき十分な配慮がなされない結果,埋立地及びその周辺地域において,護岸の破壊,高潮,津波,河川の氾濫等の災害が発生するような場合に,生命,身体等に直接的かつ重大な被害を受けるような一定の地域に居住する住民の生命,身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含む。 3 公有水面埋立法5条4号にいう慣習により公有水面に排水をなす者とは,公有水面に対し排他的に長期かつ継続的に排水をなし,慣習法上,排水をなす権利を有するに至った者をいうが,公有水面に対し,長期かつ継続的に排水をなしていても,それがもともと排水をなす権利を有するとはいえない場合は,これに当たらず,公有水面の利用が社会的に正当な利益として保護され,その利用が妨げられると業務上又は日常生活上著しい支障が生ずるなど,特定人の公物の利用が特定の権利又は法律上の利益に基づくものであると認めるべき特段の事情がない限り,公有水面に関し慣習法上の権利を有するものであるとはいえない。
- 全文