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行政事件 裁判例集

事件番号

 昭和61(行ケ)1

事件名

 選挙無効請求事件

裁判年月日

 昭和62年10月12日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 衆議院議員の定数配分規定の違憲性の判断基準 
2 衆議院議員定数の配分基準としての「府県単位・人口比例配分方式」は,明治22年の衆議院議員選挙法制定以来,明治憲法,日本国憲法を通じて成立し,なお効力を維持している憲法的習律としての性質を有するところ,この憲法的習律は,成文憲法と同一の効力を有するものではなく,これに反するからといって直ちに違憲ということはできないが,憲法条規の解釈基準になるものであり,衆議院議員の定数の配分を行う上で合理的な決定基準となるもので,右配分の合理性の判断に当たって重要な解釈基準になるとした事例 
3 昭和61年法律第67号により改正された公職選挙法13条,同法別表第1及び同法附則7項ないし10項による選挙区及び議員定数の定めが,右改正の際,衆議院議員定数の配分基準としての「府県単位・人口比例配分方式」によらずに部分的手直しを行ったもので,議員1人当たりの人口の最大区と最小区との較差2・99対1を残し,その手段,措置及び内容が改正法の立法目的である緊急暫定性と実質的に関連しているものといえないから,既に改正の当初から,同規定の下における選挙区間の議員1人当たりの人口又は選挙人数の較差は憲法の選挙権の平等の要求に反し,違憲な選挙権の不平等状態が存在しているが,右改正法の緊急暫定性という立法目的に照らし,右人口較差や次選挙の可能性をも考慮して,合理的期間内に抜本的改正により是正することが憲法上要求され,それが行われない場合に初めて右規定が憲法に違反するものと判定することができるとした上,右改正法成立後わずか2箇月足らずのうちに行われた昭和61年7月6日施行の衆議院議員選挙当時においては,抜本的是正のために憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったものと断定することは困難であるから,右選挙当時,憲法に違反するとはいえないとされた事例

裁判要旨

 1 衆議院議員の定数配分規定における選挙区間の議員1人当たりの人口の較差が憲法上要請される投票価値の平等の原則に違反するか否かを判断するに当たっては,人口較差「1対2未満」の場合は,議員定数配分規定の合憲性が推定され,これが恣意的意図ないし差別的意図の下にされたもので,立法目的が合理的でないことが立証されない限り,憲法に違反するとはいえず,人口較差「1対3以上」の場合は,もはや国会の合理的裁量の限界を超えているものと推定され,これを正当化する特別の理由が示されない限り,憲法違反と判断せざるを得ず,また,人口較差「1対2以上,1対3未満」の場合は,その配分規定について,立法目的が合理的でかつそれが重要な公益上の必要性があること,成立した法律がその手段,方法,措置としてその立法目的を達成するだけの実質的な関連性ないし実質的内容を具備していること,その実質的な関連性,内容が不十分な場合には他にこれを合理的でないと判定するに足る事情を見いだすことができないことの3つの要件の審査を要するいわば中間的審査基準ないし厳格な合理性の基準により違憲性の審査をすべきであり,これらが認められる場合には,投票価値の不平等状態が一応解消したものというべきで,その限りにおいて合憲となるが,これらの立証がない場合は,特段の事情がない限り,違憲と判断せざるを得ない。

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