1. 裁判所の審級制度
我が国は,正しい裁判を実現するために三審制度,すなわち,第一審,第二審,第三審の三つの審級の裁判所を設けて,当事者が望めば,原則的に3回までの反復審理を受けられるという制度を採用しています。第一審の裁判所の判決に不服のある当事者は,第二審の裁判所に不服申立て(控訴)をすることができ,第二審の裁判所の判決にも不服のある当事者は,更に第三審の裁判所に不服申立て(上告)をすることができます。この審級関係において上位にある裁判所を上級裁判所,下位にある裁判所を下級裁判所と呼び,不服申立ての控訴と上告を併せて上訴といいます。 個々の裁判所は,それぞれ独立して裁判権を行使し,たとえ下級裁判所であっても上級裁判所の指揮監督を受けることはありませんが,下級裁判所の裁判に不服のある当事者から上訴があったときは,上級裁判所は,下級裁判所の裁判の当否を審査する権限を有し,当該事件に関する限り,上級裁判所の判断が下級裁判所の判断より優先し下級裁判所を拘束するのです。このような制度を審級制度と呼んでいます。
2. 裁判所の配置
憲法第76条第1項は,「すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と定めています。すなわち,憲法は,最終審,最上級の裁判所として最高裁判所を設けるとともに,どのような下級裁判所を設けるかについては法律にゆだねています。この規定を受け,裁判所法が,下級裁判所として高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所の4種類の裁判所を設け,それぞれの裁判所が扱う事件を定めています。そして,具体的な裁判所の設立及び管轄区域については,下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律がこれを定めています。この関係を図示すると,次のとおりです。