令和6年5月
憲法記念日を迎えるに当たって
最高裁判所長官 戸倉三郎
1月1日に発生した令和6年能登半島地震により被災された全ての方々に改めて心からお見舞いを申し上げます。また、困難な状況の中、被災地域において、復旧や住民の方々の生活再建のために尽力されている全ての人々に対し、深甚なる感謝と敬意を表するとともに、一日も早い復旧、復興を心からお祈りいたします。
裁判所でも、被災地域の司法機能を維持するための努力を続けてきましたが、今後は、復旧、復興の進展に伴って生じる様々な法的問題に的確に対応するための態勢を確保することも重要な課題となると考えています。
司法は、法に基づき、公正で透明性のある手続により紛争を解決することを通じて法の支配を支えています。このような司法の機能を十全に発揮するためには、司法に対する国民の信頼の確保が不可欠です。司法の中核を担う裁判所は、社会や国民の意識の変化を的確に捉え、これに適切に配慮した納得性の高い判断や審理運営を行うことが求められます。また、現在裁判所が取り組んでいる裁判手続のデジタル化も、国民の裁判へのアクセスの利便性を高めると同時に、裁判手続全体を合理化、効率化して裁判手続の負担を軽減し、迅速な裁判の実現に寄与できるものとすることが重要であると考えています。
憲法記念日を迎えるに当たり、日本国憲法が具現する法の支配の理念の重要性と裁判所の職責の重さを改めて自覚し、国民から負託された司法の役割を十全に果たしていくために力を尽くしてまいりたいと思います。