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最高裁判所判例集

事件番号

 平成23(行コ)243

事件名

 農地法3条に基づく所有権移転不許可処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成22年(行ウ)第186号)

裁判年月日

 平成24年3月7日

法廷名

 東京高等裁判所

裁判種別

結果

判例集等巻・号・頁

原審裁判所名

原審事件番号

原審裁判年月日

判示事項

 法人が,永年生の植物の苗木を肥培植栽し,成育した苗木を顧客に賃貸してこれを記念樹として植え替えた上,更に生育させる事業のために農地の所有権を取得しようとしてした農地法(平成21年法律第57号による改正前)3条の規定による許可申請に対する不許可処分の取消しを求める請求が,棄却された事例

裁判要旨

 法人が,永年生の植物の苗木を肥培植栽し,成育した苗木を顧客に賃貸してこれを記念樹として植え替えた上,更に生育させる事業のために農地の所有権を取得しようとしてした農地法(平成21年法律第57号による改正前)3条の規定による許可申請に対する不許可処分の取消しを求める請求につき,?同法にいう耕作に該当するか否かは,永年生の植物の苗木や生育した樹木が林業の対象となるようなものでない限り,このような作物を栽培するために土地に肥培管理,すなわち作物の生育を助けるためにその土地に施される一連の人為的作業が施されているかどうかによって決定すべきであり,同法が作物の収穫以外の方法による農業生産力の増進を排除する趣旨であるとは解されないものの,土地において収穫を目的とせずに植物が栽培され,植物の生育を助けるための人為的作業が施されている全ての場合が同法上の耕作に当たるものではなく,最終的には,その栽培のために土地に加えられている人為的作業の実態を同法が企図する農業生産力の増進という観点から社会通念に照らして判断するよりほかはないところ,前記事業は,「葬送の標樹」として記念植樹した樹木を墓石の代わりにして散骨することを希望する者を顧客とし,人の焼骨を地面に撒くことが墓地,埋葬等に関する法律に抵触することを回避するため,人の焼骨を混合加工した肥培剤を土地に撒布して樹木を植栽するという手順をとるほか,当該土地に,植物の生育に必要でない一連の造園作業と呼ぶべき作業を加えて,これを公園や庭園に類した営造物とすることを本質的部分とするものであって,顧客が支払う対価も樹木の生育状況に着目したものではなく,樹木が「葬送の標樹」として維持されていることに着目したものと解されること等の実態に照らすと,当該土地に施される一体としての人為的作業ないし一体としての土地利用は,一般に社会において作物を栽培する目的で行われているものとは相当異なる内容・程度のものといわざるを得ず,公園,庭園,花壇等の管理に類するものであって,作物を栽培する場合と同様の農業生産力の増進に寄与するとは認め難いから,作物を栽培する目的のものと認めることはできず,農地法3条2項2号所定の不許可事由に当たり,また,?同法2条7項1号の農業生産法人であるためには,その法人の主たる事業が農業であることが必要であり,同法における農業とは耕作の事業を不可欠の内容とするものと解されるところ,前記事業に基づく主たる収入は耕作の事業によって得られるものとはいえないから,前記法人は同号の農業生産法人に当たらず,同法3条2項2号の2所定の不許可事由にも当たるとして,前記請求を棄却した事例

参照法条

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