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最高裁判所判例集

事件番号

 平成16(受)1147

事件名

 損害賠償請求事件

裁判年月日

 平成18年4月18日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄差戻

判例集等巻・号・頁

 集民 第220号111頁

原審裁判所名

 福岡高等裁判所

原審事件番号

 平成11(ネ)971

原審裁判年月日

 平成16年2月17日

判示事項

 冠状動脈バイパス手術を受けた患者が術後に腸管え死となって死亡した場合において担当医師に腸管え死が発生している可能性が高いと診断し直ちに開腹手術を実施すべき注意義務を怠った過失があるとされた事例

裁判要旨

 冠状動脈バイパス手術を受けた患者が術後に腸管え死となって死亡した場合において,(1)当該患者は,腹痛を訴え続け,鎮痛剤を投与されてもその腹痛が強くなるとともに,高度のアシドーシスを示し,腸管のぜん動こう進薬を投与されても腸管閉そくの症状が改善されない状況にあったこと,(2)当時の医学的知見では,患者が上記のような状況にあるときには,腸管え死の発生が高い確率で考えられ,腸管え死であるときには,直ちに開腹手術を実施し,え死部分を切除しなければ,救命の余地はないとされていたこと,(3)当該患者は,開腹手術の実施によってかえって生命の危険が高まるために同手術の実施を避けることが相当といえるような状況にはなかったこと,(4)当該患者の症状は次第に悪化し,経過観察によって改善を見込める状態にはなかったことなど判示の事情の下では,担当医師には,当該患者に腸管え死が発生している可能性が高いと診断し,直ちに開腹手術を実施し,腸管にえ死部分があればこれを切除すべき注意義務を怠った過失がある。

参照法条

 民法415条,民法709条

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