裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和62(オ)685
- 事件名
土地建物明渡請求事件
- 裁判年月日
平成19年3月27日
- 法廷名
最高裁判所第三小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
破棄自判
- 判例集等巻・号・頁
民集 第61巻2号711頁
- 原審裁判所名
大阪高等裁判所
- 原審事件番号
昭和61(ネ)335
- 原審裁判年月日
昭和62年2月26日
- 判示事項
1 原告として確定されるべき者が訴訟提起当時その国名を「中華民国」としていたが昭和47年9月29日の日中共同声明に伴って「中華人民共和国」に国名が変更された国家としての中国であるとされた事例
2 訴訟当事者を代表していた者の代表権の消滅が公知の事実である場合における代表権の消滅の効力発生時期
3 外国国家を代表して外交使節が我が国で訴訟を提起した後に我が国政府が当該外国国家の政府として上記外交使節を派遣していた政府に代えて新たな政府を承認したために上記外交使節の我が国における当該外国国家の代表権が消滅した場合における訴訟手続の中断
4 上告審が職権探知事項に当たる中断事由の存在を確認して原判決を破棄する場合における口頭弁論の要否
- 裁判要旨
1 (1)本件訴訟は昭和42年9月6日に提起されたが,その訴状には,原告の表示として「中華民国」と,原告代表者の表示として「中華民国駐日本国特命全権大使」とそれぞれ記載されていたこと,(2)原告の訴訟代理人に訴訟代理権を授与したのは,中華民国駐日本国特命全権大使であったこと,(3)「中華民国」は,国家としての中国(中国国家)の国名として用いられてきたものであること,(4)我が国政府は,中国国家の政府として中華民国政府を承認し,昭和27年4月28日,同政府との間で,「日本国と中華民国との間の平和条約」を締結しており,訴訟提起当時,中国国家の我が国における代表権は,中華民国駐日本国特命全権大使が有していたこと,(5)中華民国政府は,訴訟提起当時,自らが中国国家の唯一の政府であると主張していたこと,(6)我が国政府が,昭和47年9月29日,「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」(日中共同声明)において,中国国家の政府として,中華民国政府に代えて中華人民共和国政府を承認したことに伴って,中国国家の国名が「中華民国」から「中華人民共和国」に変更されたことなど判示の事実関係の下では,原告として確定されるべき者は,訴訟提起当時その国名を「中華民国」としていたが,日中共同声明に伴って「中華人民共和国」に国名が変更された中国国家というべきである。
2 訴訟当事者を代表していた者の代表権の消滅は,それが公知の事実である場合には,相手方に通知されなくても直ちにその効力を生ずる。
3 外国国家を代表して外交使節が我が国で訴訟を提起した後に,我が国政府が,当該外国国家の政府として,上記外交使節を派遣していた政府に代えて新たな政府を承認したため,上記外交使節の我が国における当該外国国家の代表権が消滅した場合には,上記外交使節から訴訟代理権の授与を受けた訴訟代理人がいるとしても,上記代表権の消滅の時点で,訴訟手続は中断する。
4 上告審は,職権探知事項に当たる中断事由が存在することを確認して原判決を破棄する場合には,必ずしも口頭弁論を経ることを要しない。
- 参照法条
(1につき)民訴法第1編第3章 当事者,民訴法133条2項1号 (2,3につき)民訴法37条 (2につき)民訴法36条1項 (3,4につき)民訴法124条1項3号 (3につき)民訴法58条1項4号,民訴法124条2項,外交関係に関するウィーン条約3条1(a) (4につき)民訴法87条,民訴法140条,民訴法297条,民訴法313条,民訴法319条,旧民訴法395条1項4号
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