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最高裁判所判例集

事件番号

 平成18(あ)876

事件名

 傷害致死被告事件

裁判年月日

 平成20年4月25日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄差戻

判例集等巻・号・頁

 刑集 第62巻5号1559頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 平成16(う)3318

原審裁判年月日

 平成18年3月23日

判示事項

 1 責任能力判断の前提となる精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度について,精神医学者の鑑定意見等が証拠となっている場合における,裁判所の判断の在り方
2 統合失調症による幻覚妄想の強い影響下で行われた行為について,正常な判断能力を備えていたとうかがわせる事情があるからといって,そのことのみによって被告人が心神耗弱にとどまっていたと認めるのは困難とされた事例

裁判要旨

 1 責任能力判断の前提となる生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度について,専門家たる精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には,鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり,鑑定の前提条件に問題があったりするなど,これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り,裁判所は,その意見を十分に尊重して認定すべきである。
2 統合失調症の幻覚妄想の強い影響下で行われた本件傷害致死の行為(判文参照)について,それが犯罪であることを認識し,後に自首しているなど,一般には正常な判断能力を備えていたことをうかがわせる事情があるからといって,そのことのみによって,その行為当時,被告人が心神喪失ではなく心神耗弱にとどまっていたと認めることは困難である。

参照法条

 (1,2につき)刑法39条

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