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最高裁判所判例集

事件番号

 平成20(受)2029

事件名

 損害賠償請求事件

裁判年月日

 平成22年1月26日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄自判

判例集等巻・号・頁

 民集 第64巻1号219頁

原審裁判所名

 名古屋高等裁判所

原審事件番号

 平成18(ネ)872

原審裁判年月日

 平成20年9月5日

判示事項

 当直の看護師らが抑制具であるミトンを用いて入院中の患者の両上肢をベッドに拘束した行為が,診療契約上の義務に違反せず,不法行為法上違法ともいえないとされた事例

裁判要旨

 当直の看護師らが抑制具であるミトン(手先の丸まった長い手袋様のもので緊縛用のひもが付いているもの)を用いて入院中の患者の両上肢をベッドに拘束した行為は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記患者が転倒,転落により重大な傷害を負う危険を避けるため緊急やむを得ず行われた行為であって,診療契約上の義務に違反するものではなく,不法行為法上違法ともいえない。
(1) 上記患者は,上記行為が行われた当日,せん妄の状態で,深夜頻繁にナースコールを繰り返し,車いすで詰所に行ってはオムツの交換を求め,大声を出すなどした上,興奮してベッドに起き上がろうとする行動を繰り返していたものであり,当時80歳という高齢で,4か月前に他病院で転倒して骨折したことがあったほか,10日ほど前にもせん妄の状態で上記と同様の行動を繰り返して転倒したことがあった。
(2) 看護師らは,約4時間にもわたって,上記患者の求めに応じて汚れていなくてもオムツを交換し,お茶を飲ませるなどして落ち着かせようと努めたが,上記患者の興奮状態は一向に収まらず,また,その勤務態勢からして,深夜,長時間にわたり,看護師が上記患者に付きっきりで対応することは困難であった。
(3) 看護師が上記患者の入眠を確認して速やかにミトンを外したため,上記行為による拘束時間は約2時間であった。

参照法条

 民法415条,民法709条

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