裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和36(あ)2486
- 事件名
尊属殺
- 裁判年月日
昭和38年12月24日
- 法廷名
最高裁判所第三小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
破棄差戻
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第17巻12号2537頁
- 原審裁判所名
福岡高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和36年9月28日
- 判示事項
一 刑法上の直系尊属にあたらないとされた事例
二 刑法上の直系尊属としての養親の解釈について、民法上の追認に関する法理を容れる余地の有無
- 裁判要旨
一 戸籍上、被告人の養子縁組につき、その代諾権者とされている者が真実の親権者でないときは、右縁組は、適法な届出を欠くものとして、人事訴訟による確定または戸籍の訂正をまたず、無効であり、しかも、被告人が犯行前において右無効原因を認識して右縁組を追認したと認めることができないときは、被告人と事実上の養親との生活事実の如何にかかわりなく、本人たる被告人の無権代理行為の追認があつたと認める余地もないから、右事実上の養親は、刑法上、被告人の直系尊属にあたらないものと解すべきである。
二 一五歳未満の子の養子縁組に関する代諾者の法定代理権の欠缺は一種の無権代理と解し、満一五歳に達した養子は、法定代理人でない者が自己のため代諾した養子縁組を有効に御委任することができ、しかもこの追認は黙示で足り、その意思表示は満一五歳に達した養子から生存養親に対してなすべく、適法に追認がなされたときは縁組はこれにより当初から有効となるものと解するのが相当である(昭和二四年(オ)第二二九号同二七年一〇月三日第二小法廷判決、民集六巻九号七五三頁参照)。このことは、刑法上、直系尊属としての養親にあたるかどうかの解釈についても、少くとも犯罪行為以前における本人の追認に関する限りは、あてはまると考えられる。
- 参照法条
刑法200条,民法797条,民法802条,民法113条,民法807条,民法119条
- 全文