裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和47(あ)1168
- 事件名
公職選挙法違反、国家公務員法違反
- 裁判年月日
昭和49年11月6日
- 法廷名
最高裁判所大法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
破棄自判
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第28巻9号743頁
- 原審裁判所名
東京高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和47年4月5日
- 判示事項
一 公職選挙法一四六条一項における候補者の氏名を表示する文書の意義
二 公職選挙法一四六条一項における候補者の氏名を表示する文書にあたるとされた事例
三 人事院規則一四―七・五項一号にいう特定の候補者の意義
四 国家公務員法一〇二条一項、人事院規則一四―七・五項一号、六項一三号及び公職選挙法一四六条一項に各違反する文書の配布が国家公務員法一一〇条一項一九号及び公職選挙法二四三条五号の各罪の違法性を欠くものでなくそのように解することが憲法二一条、三一条に違反しないとされた事例
- 裁判要旨
一 公職選挙法一四六条一項における候補者の氏名を表示する文書は、特定の候補者の氏名を表示するものであることを要し、かつ、それをもつて足り、一又は二以上の選挙区ごとにそれぞれ複数の候補者の氏名を表示する文書であつても、候補者の氏名が特定されているかぎり、これに含まれるものと解すべきである。
二 「都議選いよいよ始まる」「我々の真の代表を選ぼう」という表題を付し、「参議院選挙が終り都議選も昨日8日告示され開始された。今回の都議選は長い間隠されていた自民党議員の汚職が、都民の前に明るみに出され、″自民党都政はもう許せない″という激しい都民の怒りの中で、都議会解散を勝ちとつた選挙です。参選における自民党の完敗は都民がこうした都議会にみる汚職、腐敗の政治に対してきびしい判断を下した結果なのです。高物価、重税、交通地獄、水ききんと毎日悩まされているのはこの悪政の結果です。住み良い明るい東京都にする為に重要な選挙です。我々の代表を一人でも多く出す様みんなで一人の棄権者もなく23日は投票しましよう。組合としては大会の政治活動の自由、政党支持の自由の原則の上に立つて先の中央執行委員会で社、共両党支持を決定し、都議選において次の候補者を推せんいたしましたのでお知らせいたします。」と記載したうえ、日本社会党から立候補した五七名及び日本共産党から立候補した三六名の氏名が各候補者の選挙区ごとに表示してある文書は、たとえ選挙区ごとに両党候補者全員の氏名が掲げられているものであつても、単なる政治活動文書ではなく、公職選挙法一四六条一項における候補者の氏名を表示する文書にあたる。
三 人事院規則一四―七・五項一号にいう特定の候補者とは、一選挙区につき確定の一人の候補者のみを意味するものではなく、一又は二以上の選挙区における複数の候補者であつても、特定されているかぎり、これに含まれるものと解すべきである。
四 国家公務員法一〇二条一項、人事院規則一四―七・五項一号、六項一三号及び公職選挙法一四六条一項に各違反する本件の文書の配布(判文参照)は、たとえ裁量権のない機械的職務に従事する非管理職の国家公務員によりその属する職員団体が日常活動として行つていたいわゆる朝ビラの配布の方法で、主として同団体の日常活動として行う意識でされたものであり、文書の内容が同団体の候補者推薦決定を記載したもので、各被告人の配布した文書の枚数が六枚ないし一四枚であり、かつ、同僚に対して配布された場合であつても、そのような事情は犯情に影響するにとどまり、国家公務員法一一〇条一項一九号及び公職選挙法二四三条五号の各罪の違法性を失わせるものではない。このように解しても憲法二一条、三一条に違反しない。
- 参照法条
公職選挙法146条1項,公職選挙法243条5号,人事院規則14―7,人事院規則5項1号,人事院規則6項13号,国家公務員法102条1項,国家公務員法110条1項19号,憲法21条,憲法31条,刑法35条