裁判例検索

裁判例結果詳細

最高裁判所判例集

事件番号

 昭和57(あ)1555

事件名

 業務上過失致死、同傷害

裁判年月日

 昭和63年2月29日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 決定

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第42巻2号314頁

原審裁判所名

 福岡高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和57年9月6日

判示事項

 一 迅速な裁判の保障との関係で公訴提起の遅延がいまだ著しいとまでは認められないとされた事例
二 胎児に病変を発生させ出生後死亡させた場合における業務上過失致死罪の成否
三 刑訴法二五三条一項にいう「犯罪行為」の意義
四 被害者が受傷後期間を経て死亡した場合における業務上過失致死罪の公訴時効
五 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合の公訴時効

裁判要旨

 一 公訴提起が事件発生から相当の長年月を経過した後になされたとしても、複雑な過程を経て発生した未曾有の公害事犯であつてその解明に格別の困難があつたこと等の特殊事情があるときは、迅速な裁判の保障との関係において、いまだ公訴提起の遅延が著しいとまではいえない。
二 業務上の過失により、胎児に病変を発生させ、これに起因して出生後その人を死亡させた場合も、人である母体の一部に病変を発生させて人を死に致したものとして、業務上過失致死罪が成立する。
三 刑訴法二五三条一項にいう「犯罪行為」には、刑法各本条所定の結果も含まれる。
四 業務上過失致死罪の公訴時効は、被害者の受傷から死亡までの間に業務上過失傷害罪の公訴時効期間が経過したか否かにかかわらず、その死亡の時点から進行する。
五 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合につき公訴時効完成の有無を判定するに当たつては、その全部を一体として観察すべきであり、最終の結果が生じたときから起算して同罪の公訴時効期間が経過していない以上、その全体について公訴時効は未完成である。

参照法条

 憲法37条1項,刑法211条前段(昭和43年法律61号による改正前のもの),刑法54条1項,刑訴法250条,刑訴法253条1項

全文