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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和29(あ)1056

事件名

 傷害致死、暴行、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、窃盜

裁判年月日

 昭和33年5月28日

法廷名

 最高裁判所大法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第12巻8号1718頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和28年12月26日

判示事項

 一 いわゆる共謀共同正犯の成立要件
二 実行行為に関与しない共謀者の刑責と憲法第三一条
三 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」であるか
四 共謀の判示方法
五 憲法第三八条第二項の法意
六 憲法第三八条第三項の法意
七 被告人本人との関係における共犯者の犯罪事実に関する供述と、憲法第三八条第三項にいわゆる「本人の自白」
八 数人間の順次の共謀と共謀共同正犯の成立

裁判要旨

 一 いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が存しなければならない
二 いわゆる共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、共同正犯の刑責を負うもので、かく解することは憲法第三一条に違反しない
三 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」にほかならず、これを認めるためには厳格な証明によらなければならない
四 共謀の判示は、謀議の行われた日時、場所またはその内容の詳細、すなわち実行の方法、各人の行為の分担役割等についてまで、いちいち具体的に判示することを要しない
五 憲法第三八条第二項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白または不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白の証拠能力を否定したものである
六 憲法第三八条第三項の規定は、被告人本人の自白の証拠能力を否定または制限したものではなく、かかる自白の証明力(証拠価値)に対する自由心証を制限し、被告人本人を処罰するには、さらにその自由の証明力を補充しまたは強化すべき他の証拠(いわゆる補強証拠)を要することを規定したものである
七 共同審理を受けていない単なる共犯者は勿論、共同審理を受けている共犯者(共同被告人)であつても、被告人本人との関係においては、被告人以外の者であつて、かかる共犯者または共同被告人の犯罪事実に関する供述は、憲法三八条二項とごとき証拠能力を有しないものでない限り、独立、完全な証明力を有し、憲法三八条三項にいわゆる「本人の自白と同一視し、またはこれに準ずるものではない
八 同一の犯罪について、数人の間の順次共謀が行われた場合は、これらの者のすべての間に当該犯行の共謀が行われたものと解するを相当とし、数人の間に共謀共同正犯が成立するためには、その数人が同一場所に会し、その数人の間に一個の共謀の成立することを必要とするものではない

参照法条

 刑法60条,憲法31条,憲法38条2項,憲法38条3項,刑訴法335条,刑訴法335条1項,刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法319条

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