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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和30(あ)1983

事件名

 詐欺、窃盗

裁判年月日

 昭和31年1月19日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 決定

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第10巻1号67頁

原審裁判所名

 大阪高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和30年5月13日

判示事項

 窃盗罪にあたる一事例

裁判要旨

 一 旅館の宿泊客が、不法領得の意思で、その旅館の提供したその所有の丹前、浴衣、帯、下駄を着用したまま旅館から立ち去る所為は、窃盗罪にあたる。
 (裁判官斎藤悠輔の小数意見)
二 原判決は本件窃盗の目的物である丹前、浴衣、帯、下駄は被告人が旅館の承諾の下に借受けて着用したものと認定したことが明白であるから旅館に右物件の民法上の占有権は存在するかも知れないが刑法上の所持は専ら被告人に存するものと解するから被告人に不法領得の意思があつて右物件を旅館に返還しなかつたとしてもその所持を侵奪したものといえないから横領罪を構成することあるいは格別窃盗罪の成立を肯定できない。
 しかのみならず右丹前等の時価は五千三百円相当であるにかかわらず、旅館に遺留した洋服、靴等の時価は一万八千五百円であるというのであるから、それが他から騙取したものであるとしても右丹前等につき不法領得の意思を肯定することは経験則に反する。

参照法条

 刑法235条,刑法252条1項,裁判所法11条

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