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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和31(あ)4270

事件名

 往来妨害致死傷

裁判年月日

 昭和36年1月10日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第15巻1号1頁

原審裁判所名

 名古屋高等裁判所  金沢支部

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和31年8月11日

判示事項

 一 違法な橋梁損壊工事をするについて立てられた通行禁止の立札と往来妨害致死傷罪の成立。

二 往来妨害致死傷罪の犯意。

三 往来妨害致死傷罪において橋梁損壊と致死傷の結果との間に因果関係があると認められる事例。

四 「傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従ツテ処断ス」という規定の趣旨。

裁判要旨

 一 県土木部道路課長である被告人が、故意に風害の状況を作出するため、橋梁損壊工事を実施せしめその結果人を死傷いたした場合は、これによる往来危険防止異のため県名義の通行禁止の立札が立てられていたとしても、右工事による往来妨害致死傷罪の成立を妨げない。

二 刑法第一二四条第二項の罪が成立するためには、同条第一項列記の客体を損壊または壅塞して往来の妨害を生ぜしめる意思があれば足り、それ以外に傷害ないし傷害致死の結果につき予見あることを要するものではない。

三 右損壊行為実施中たまたま橋梁が墜落するに至り、これに因つて通行人および情を知らない作業人夫の死傷の結果を生ぜしめた場合には、被告人に右致死傷の結果に対する責任がないとは言えない。

四 刑法第一二四条第二項の「前項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス」という規定の趣旨は、人の身体を傷害した場合には刑法第二〇四条の刑と比較し、死に至した場合には同法第二〇五条の刑と比較し、それぞれ重きに従つて処断するというにある。

参照法条

 刑法124条,刑法204条,刑法205条

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