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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和33(あ)2082

事件名

 騒擾、建造物侵入、職務強要、銃砲等所持禁止令違反、公務執行妨害、傷害、外国人登録法違反

裁判年月日

 昭和35年12月8日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第14巻13号1818頁

原審裁判所名

 仙台高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和33年6月30日

判示事項

 一 騒擾罪の成立と共同意思
二 騒擾罪における多衆の意義
三 右共同意思の意義
四 騒擾罪における暴行の意義
五 騒擾罪と他の罪名に触れる暴行脅迫
六 騒擾罪における暴行又は脅迫と認められる場合
七 右罪における共同意思の内容

裁判要旨

 一 騒擾罪は、多衆が集合して暴行または脅迫をなすによつて成立するが、その暴行または脅迫は、集合した多衆の共同意思に出たものであることを要する。
二 右多衆であるためには一地方における公共の平和、静謐を害するに足る暴行、脅迫をなすに適当な多人数であることを要する。
三 騒擾罪の成立に必要な共同意思は、多衆全部間における意思の連絡ないし相互認識の交換までは必ずしもこれを必要とせず、事前の謀議、計画、一定の目的があることも、また当初から存在することも必要でなく、多衆集合の結果惹起せられることのあり得べき多衆の合同力による暴行脅迫の事態の発生を予見しながら、あえて騒擾行為に加担する意思があれば足り、必ずしも確定的に具体的な個々の暴行脅迫の認識を要するものではない。
四 騒擾罪における暴行は、物に対する有契力の行使を含む。
五 騒擾罪の成立要素である暴行、脅迫は、他の罪名に触れない程度のもので足り、その暴行、脅迫が他の罪名に触れる場合には、その行為は一面騒擾罪を成立せしむると同時に他の罪名に触れるものと解すべきである。
六 騒擾罪は、群集による集団犯罪であるから、その暴行又は脅迫は集合した多衆の共同意思に出たもの、いわば集団そのものの暴行又は脅迫と認められる場合であることを要するが、その多衆すべての者が現実に暴行脅迫を行うことは必要でなく、群集の集団として暴行脅迫を加えるという認識のあることが必要なのである。
七 右の共同意思は、多衆の合同力を恃んで自ら暴行又は脅迫をなす意思ないしは多衆をしてこれをなさしめる意思と、かかる暴行又は脅迫に同意を表し、その合同力に加わる意思とに分たれ、集合した多衆が前者の意思を有する者と後者の意思を有する物で構成されているときは、その多衆の共同意思があるものとなるのである。

参照法条

 刑法106条,刑法54条

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