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最高裁判所判例集

事件番号

 平成6(オ)1838

事件名

 執行判決

裁判年月日

 平成10年4月28日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 民集 第52巻3号853頁

原審裁判所名

 大阪高等裁判所

原審事件番号

 平成5(ネ)2563

原審裁判年月日

 平成6年7月5日

判示事項

 一 香港高等法院がした訴訟費用の負担を命ずる裁判と民事執行法二四条所定の「外国裁判所の判決」
二 併合請求の裁判籍が存在することを根拠に香港の裁判所に民訴法一一八条一号所定の「外国裁判所の裁判権」が認められた事例
三 司法共助に関する条約に定められた方法によらない送達と民訴法一一八条二号所定の「訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達」
四 香港在住の当事者から私的に依頼を受けた者が我が国でした直接交付の方法による送達と民訴法一一八条二号
五 弁護士費用を含む訴訟費用全額の負担を命ずる裁判と民訴法一一八条三号所定の「公の秩序」
六 中国に返還される前の香港と我が国との間における民訴法一一八条四号所定の「相互の保証」の有無

裁判要旨

 一 香港高等法院がした訴訟費用負担命令並びにこれと一体を成す費用査定書及び費用証明書は、民事執行法二四条所定の「外国裁判所の判決」に当たる。
二 甲及び甲が代表者を務める乙会社と丁との間の起訴契約に基づき、丁が丙に対して香港の裁判所に保証債務の履行を求める第一訴訟を提起したところ、丙が、第一訴訟が認容された場合に備えて、甲に対して根抵当権の代位行使ができることの確認を求める第二訴訟を、甲及び乙会社に対して求償請求ができることの確認を求める第三訴訟を提起し、第一訴訟及び第二訴訟については香港に国際裁判管轄が存在するなど判示の事実関係の下においては、第三訴訟については、民訴法七条の規定の趣旨に照らし、第二訴訟との間の併合請求の裁判籍が香港に存在することを肯認して、香港の裁判所のした判決を我が国で承認することが、当事者間の公平、裁判の適正・迅速の理念に合致し、条理にかなうものである。
三 裁判上の文書の送達につき、判決国と我が国との間に司法共助に関する条約が締結されていて、訴訟手続の開始に必要な文書の送達が右条約に定める方法によるべきものとされている場合には、右条約に定められた方法を遵守しない送達は、民訴法一一八条二号所定の要件を満たさない。
四 香港在住の当事者から私的に依頼を受けた者が我が国でした直接交付の方法による送達は、民訴法一一八条二号所定の要件を満たさない。
五 弁護士費用を含む訴訟費用の全額をいずれか一方の当事者に負担させる裁判は、実際に生じた費用の範囲内でその負担を命ずるものである限り、民訴法一一八条三号所定の「公の秩序」に反するものではない。
六 中国に返還される前の香港と我が国との間には、金銭の支払を命じた判決に関し、民訴法一一八条四号所定の「相互の保証」がある。

参照法条

 民事執行法22条6号,民事執行法24条,民訴法7条,民訴法118条,民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約,日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の領事条約

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