裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和50(オ)847
- 事件名
約束手形金請求
- 裁判年月日
昭和51年6月17日
- 法廷名
最高裁判所第一小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
破棄差戻
- 判例集等巻・号・頁
民集 第30巻6号592頁
- 原審裁判所名
福岡高等裁判所 宮崎支部
- 原審事件番号
昭和49(ネ)89
- 原審裁判年月日
昭和50年6月30日
- 判示事項
一、自働債権である手形債権の時効消滅前に債務者が反対債権である手形債権を取得していたとして相殺の許される場合
二、釈明権不行使の違法があるとされた事例
- 裁判要旨
一、甲と乙とが相互に約束手形を振り出し、甲が乙から振出を受けた手形を債権担保のため銀行に裏書譲渡し、その後右債権の消滅によつて甲が実質上手形上の権利を再取得したが、銀行から甲への戻裏書はおくれてされた場合において、甲が実質的に手形上の権利を再取得した時が乙の手形債権の時効消滅前であるときは、戻裏書の時が時効消滅後であつても、乙は右手形債権をもつて甲の手形債権と相殺することができる。
二、甲が乙に第二約束手形を、乙が甲に第一約束手形を相互に振り出し、甲は第一手形を債権担保のため銀行に譲渡したのち倒産して所在不明となり、甲の債権者丙が甲に代位して銀行から甲への戻裏書をさせたうえ乙に対して手形金を請求する訴訟において、乙が、第二手形債権の時効消滅前に両手形債権は相殺適状にあつたとして相殺の抗弁を主張している場合に、第二手形債権は第一手形の右戻裏書の時には時効消滅しているが、証拠として提出されている第一手形の戻裏書の欄に裏書の日付のほかにそれ以前の日付による「買戻し」の記載があつて、その時に甲が第一手形債権を実質的に取得していた疑いがあり、かつ、その時には第二手形債権がまだ時効消滅していないときには、裁判所は、釈明権を行使して乙に甲が第一手形債権を実質的に取得した時期等について主張立証を尽くさせたうえ相殺の抗弁を審判すべきであり、これをせずに戻裏書の時に第二手形債権が時効消滅していたことから直ちに相殺の抗弁を斥けたことは、釈明権不行使の違法となる。
- 参照法条
民法508条,民訴法127条
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