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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和24(れ)340

事件名

 建造物侵入

裁判年月日

 昭和25年9月27日

法廷名

 最高裁判所大法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第4巻9号1783頁

原審裁判所名

 大阪高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和23年11月6日

判示事項

 一 憲法第二八條にいわゆる「保障」は勤勞者以外の團体又は個人の單なる集合に及ぶか
二 刑法第一三〇條にいわゆる「人の看守する建造物」の意義
三 辯護人の氏名を判決書に記載することの要否
四 隠退藏物資摘發のため人の看守する工場に侵入した行爲と住居侵入罪
五 隠退藏物資摘發のため人の看守する工場に侵入した行爲と刑法第三五條
六 刑法第一三〇条を概括的に適用することの適否
七 隠退藏物資摘發のため人の看守する工場に侵入した行爲と正當防衛又は緊急避難

裁判要旨

 一 憲法第二八條の保障は、勤勞者以外の團体、又は個人の單なる集合に過ぎないものの行動に對してまで及ぼすものではない。(昭和二二年(れ)第三一九號昭和二四年五月一八日大法廷判決參照)
二 刑法第一三〇條に所謂建造物とは、單に家屋を指すばかりでなく、その圍繞地を包含するものと解するを相當とする。所論本件工場敷地は判示工場の附屬地として門塀を設け、外部との交通を制限して守備警備員等を置き、外來者が、みだりに出入りすることを禁止していた場所であることは記録上明らかであるから、所論敷地は同條にいわゆる人の看守する建造物と認めなければならない。
三 憲法第三七條第三項は、刑事被告人は、いかなる場合にも資格を有する辯護人を依頼することができること、及び被告人が自らこれを依頼することができないときは國でこれを附する旨を規定したものではない。そして舊刑訴法第六九條第二項は判決書に關與した檢察官の官氏名を記載すべき旨を規定しているが、公判に立會つた辯護人の氏名を記載すべき旨を規定していない。されば原判決書には、本件公判に立會つた辯護人の氏名を記載していないことは所論のとおりであるが、しかしその爲何等舊刑訴法の條規に反するところはなく、また憲法第三七條第三項に反するものでもない。そして判決書に公判に立會つた辯護人の氏名を記載しないからとて所論のように裁判の公正を疑わしめるものではない。
四 隠退藏物資の摘發については正規の機關の適正な活動を期待することができないとして、これが摘發のため人の看守する工場に多人數大舉して押寄せ法令上の根據もなく又これを業務とするものでもないのにかかはらず、看手者の意に反して工場内に侵入した場合には、住居侵入罪が成立する。
五 隠退藏物資摘發のため人の看守する工場に多人數大舉して押寄せ、法令上の根據もなく又これを業務とするものでもないのにかかわらず、看手の意に反して工場内に侵入した行爲は、刑法第三五條にいわゆる「法令又は正當の業務に因り爲したる行爲」ということはできない。
六 住居侵入の事実に法律を適用するにあたつては、刑法第一三〇条の前段、後段と区別しないで、概括的に同条を適用しても違法ではない。
七 隠退藏物資摘發のため人の看守する工場に多く數大舉して押寄せ、法令上の根據もなく又これを業務とするものでもないのにかかわらず、看守の意に反して工場内に侵入した行爲は、假に當該工場内に隠退藏物資があつたとしても、正當防衛又は緊急避難行爲と認めることはできない。

参照法条

 憲法28條,憲法37條3項,刑法130條,刑法35條,刑法36條,刑法37條,舊刑訴法69條1項

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