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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和25(れ)1715

事件名

 詐欺未遂

裁判年月日

 昭和26年5月8日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第5巻6号1004頁

原審裁判所名

 大阪高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和25年9月4日

判示事項

 一 「モミ」賭博の方法と詐欺罪の成立
二 いわゆる「モミ」賭博による詐欺の実行の着手
三 被害者の金銭の不所持と「モミ」賭博による詐欺未遂罪の成否

裁判要旨

 一 原審の認定した事実によれば、本件詐欺は俗にモミと称する詐欺賭博によるものであつて、見物人には一の数字を書いた紙玉を落し入れると称して金を賭けさせ、金を賭けたものが一の数字のある紙玉を拾い上げたときは賭金の三倍相当の金をやり、もし他の数字のある紙を拾うたときはその賭金は胴元の所得とするという方法であり、被告人においては一の数字のある紙玉を「数他玉中に落して混ぜるように見せかけ、実際は混入せず巧に自分の手中で他の数字を書いた紙玉と取替え」るというのであるから、賭金した見物人には勝つ機会が全くないに拘らず、その機会があるかのように欺罔して賭金を騙取するのである。論旨は、モミ賭博に手品が介在することは社会常識であるから詐欺にはならないと主張するがかかる場合に客は手品に乗らないつもりで賭けても胴元の手品に引かかるのであるから、やはり錯誤に陥つた結果金銭を交付するのであつて詐欺の要件を具えていることはいうまでもない。
二 原審の認定した本件詐欺の方法は、第一点に説明した通りであつて、原判決の認識した事実は賭金した見物人には勝つ機会が全くないのに拘らずその機会があるように「盛にその方法によつて客に勝負をすすめ、被告人AとB、C等は見物人の中に居て勝負するように見せかけて客を誘う所謂サクラの役をつとめ、被告人Dは見張となつて戒の役をしていると見物人中のEことF(当時二十五年)がうまく欺しの手に乗つて勝負しようと決定し」たというのであるから欺罔着手のあつたことは極めて明白である。
三 旅行中の船客は多少の金銭を所有するのが普通であり又他人から金銭を借りることもできたかも知れないのであるからたまたまFが賭金に足りるだけの金銭を持つていなかつたと仮定しても金銭騙取という結果発生の可能性はあつたのである。されば、詐欺の被害物件がないのに犯罪成立するものとした違法があるとの論旨は理由がない。

参照法条

 刑法246条1項,刑法43条,刑法60条,刑法246条,刑法250条

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