裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和23(れ)1114
- 事件名
強盗
- 裁判年月日
昭和23年12月24日
- 法廷名
最高裁判所第三小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第2巻14号1883頁
- 原審裁判所名
東京高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和23年4月24日
- 判示事項
一 精神鑑定の請求と精神障碍の事實上の主張
二 裁判所法第二六條第一項の合憲性
三 精神病者の證言の證據能力
四 刑訴法第三四七條第一項の法意
五 被害者不知の間になされた財物の奪取と強盗罪
六 緊急逮捕手続と司法警察官の被害者に対する訊問権
七 證據書類中の被害金額の限度内でこれと異る被害金額を認定した場合と虚無の證據
八 刑訴應急措置法第一三條第二項の合憲性
- 裁判要旨
一 記録によれば、被告人の辯護人は原審の公判廷において、被告人の精神状態を明らかにするために精神鑑定その他の證據調の請求をしたことは認められるが、それだけでは被告人が本件犯行當事に心神喪失者若しくは心神耗弱者等であつたことの事實上の主張がなされたものとは言うことができない。
二 裁判所法第二六條第一項は違憲でない。(昭和年二二(れ)第二八〇號昭和二三年七月二九日大法廷判決參照)
三 精神病者であつても症状によりその精神状態は時に普通人と異ならない場合もあるのであるから、その際における證言を採用することは採證法則に反するものではなく、要は事實審の自由な判斷によつてその採否を決すべきものである。
四 刑事訴訟法第三四七條第一項において裁判長は各個の證據につき取調を終えた毎に被告人に意見の有無を問うべきことを規定しているのは被告人に證據について意見を述べる機會を與えなければならないことを規定したのであつて、被告人が意見を有しない事でも強て之れを述べさせなければならないことまで規定したものではない。
五 強盗犯人が被害者を脅迫しその犯行を抑圧中に財物を奪取すれば、その奪取行為がたまたま被害者の気付かない間になされたものであつても、強盗罪が成立する。
六 刑訴応急措置法第八条第二号いわゆる緊急逮捕の手続は、強制捜査手続であるから、司法警察官は、被疑者に対し訊問権を有する。
七 證據書類中の被害金額三千九百八十圓となつているのを、被害金額三千二百圓と判示したのは、虚無の證據を引用したものではない。
八 刑訴應急措置法第一三條第二項の規定が日本國憲法の條規に反するものでないことは當裁判所の判例とするところであつて、未だこれを變更する必要を認めない。
- 参照法条
刑訴法360條2項,刑訴法337條,刑訴法347條1項,刑訴法336條,憲法11條,裁判所法26條1項,刑法236条,刑訴応急措置法8条2号
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