裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和23(れ)1140
- 事件名
公選投票賄賂授受
- 裁判年月日
昭和24年4月6日
- 法廷名
最高裁判所大法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第3巻4号456頁
- 原審裁判所名
東京高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和23年8月6日
- 判示事項
一 舊刑法第二編第四章第九節第二三四條のいわゆる公選投票賄賂罪の規定の合憲性
二 舊刑法第二三四條規定の効力
三 憲法第九八條と憲法施行前に適法に制定された法令の合憲性
四 舊刑法第二三四條の適用とその合憲性
- 裁判要旨
一 舊刑法第二編第四章第九節第二三四條のいわゆる公選投票賄賂罪の規定は舊憲法が明治二二年に制定されたときに、その第七六條によつて「憲法ニ矛盾セザル現行ノ法令」であつて「遵由ノ効力ヲ有ス」るものと認められ、現行刑法が明治四一年一〇月一日から施行されるに當つて舊刑法を廢止した際にも刑法施行法第二五條によつて「當分ノ内刑法施行前ト同一ノ効力ヲ有ス」るものとして存置されてより今日に至つたものである。
二 舊刑法第二三四條の内容は論旨に指摘するように今日においては他の法律の規定と權衡を失し時代に添わない感のあることも事實である、しかしながらこの規定は賄賂を伴う公選の投票に關する一般的處罰規定を缺いたこれまでの經過において實際上必要な規定として適用されてその効力を持続して來たのであるから刑法施行法第二五條に「當分ノ内」の字句があるとしても、他の法律によつて廢止されない限り法規としての効力を失つたものと言うことはできない。
三 新憲法は、第九八條において「その條規に反する法律、命令、詔勅」等の効力を有しなことを規定している、從つて、その反面解釋として憲法施行前に適法に制定された法令は、その内容が憲法の條規に反しない限り効力を有することを認めているものと解さなければならない。
四 新憲法下において舊刑法第二三四條の規定を適用するに當つては、何人が何人に投票したかの審理をすることは許されないものと解すべきである。しかしながら右の規定の適用については、賄賂の授受及び投票の事實を明らかにすれば足りるのであつて、必ずしも何人が何人に投票したかを明らかにすることを要するのではないから、右の規定は新憲法の條規に反するものではない。
- 参照法条
舊刑法234條,舊憲法76條,刑法施行法25條,憲法98條