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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和23(れ)967

事件名

 詐欺

裁判年月日

 昭和24年2月15日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第3巻2号175頁

原審裁判所名

 福岡高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和23年3月6日

判示事項

 一 私人の所持を禁ぜられている物に對する詐欺罪の成立
二 詐欺の被害者と被告にとの間における親族關係の有無につき判斷明示の要否

裁判要旨

 一 原判決の認定した本件被害物件は元軍用アルコールであつて、かりにこれはいわゆる隠匿物資であるために、私人の所持を禁ぜられているものであるとしても、それがために所論のごとく詐欺罪の目的となり得ないものではない。刑法における財物取罪の規定は人の財物に對する事實上の所持を保持せんとするものであつて、これを所持するものが、法律上正當にこれを所持する權限を有するかどうかを問はず、たとい刑法上その所持を禁ぜられている場合でも現實にこれを所持している事實がある以上社會の法的秩序を維持する必要からして、物の所持という事實上の状態それ自體が獨立の法益として保護せられみだりに不正の手段によつて、これを侵すことを許さぬとする趣意である。
二 被告人と(詐欺の)被害者との間における親族關係の存在は、單に、法律上刑の免除の原由たるに過ぎないのであるから、原審において、特に、被告人側から、その存在を主張した事實のない本件においては判決においてその関係の存在しないことを明示しなかつたからといつて、これを違法ということはできない。

参照法条

 刑法246條,刑法251條,刑法244條,舊刑訴法360條2項

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