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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和24(れ)1474

事件名

 麻薬取締法違反、昭和二〇年厚生省令第四四号違反

裁判年月日

 昭和24年8月9日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第3巻9号1437頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和24年4月13日

判示事項

 一 訴訟手續に關する法規が改正された場合における新法の適用範圍
二 刑訴應急措置法第一三條第二項の合憲性
三 刑訴應急措置法附則第四項の合憲性及び刑訴應急措置法第一三條第二項の合憲性
四 辯護人を要しない事件の審理につき期日を懈怠した辯護人不出廷のまま辯論を終結した場合と辯護權の不法制限の有無
五 有罪判決において罪となるべき事實の認定に對する法令適用の判示の程度
六 新刑訴法第四一一條と刑訴應急措置法第一三條第二項の關係と上告理由
七 公判を公開した旨の記載を缺く公判調書と憲法違反の有無
八 未提出の辯護人の上告趣意書の論旨を援用した相辯護人の上告理由の適否

裁判要旨

 一 訴訟手續に關する法規が改正された場合に新法を如何なる時から如何なる事件に適用するかは、經過法の立法に際して諸般の事情を勘案して決せらるべき問題であつて、法律に一任されているのである。(昭和二三年(れ)第一五七七號、同二四年五月一八日當裁判所大法廷判決参照)
二 刑訴應急措置法第一三條第二項は、上告に際し、人種、信條、性別、社會的身分又は門地の如何を問わず、何人に對しても等しく適用されるものであるから憲法第一四條に違反するところはなく、又憲法第三二條にも違反しないことについては當裁判所大法廷がすでに判例として示すところである。(昭和二三年(れ)第一二二一號同二四年三月二三日判決)
三 刑訴應急措置法附則第四項は、上告の理由について舊刑訴法によるか、右措置法によるかを辯論終結の時を標準として區別したもので同種の一群の事件は一團として法律上平等に取扱われてをりこれ亦人種、信條、性別、社會的身分又は門地により區別したものではないから、右附則第四項も亦憲法第一四條に違反するものでないことも當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一一三九號同二四年四月一六日當裁判所判決)なお、右措置法第一三條第二項が憲法第三七條にも違反しないことについても當裁判所大法廷判決の示すところである。(昭和二三年(れ)第二九〇號同二三年六月三〇日當裁判所判決)
四 適法な手續によつて召喚を受けながら公判期日に出頭しなかつた辯護人は自から期日を懈怠したものであつて、本件のように辯護人を要しない事件の審理については出廷した辯護人に辯論をする機會を與えれば足りるのであり、不出廷の辯護人の辯論を聴かないで辯論を終結しても不法に辯護權の行使を制限したものでない。
五 「有罪判決において、罪となるべき事實の認定に法令の適用を示すには、その事實に對し、現に効力を有する法規の適用を示せば足りるのであつて、その法規が現に効力を有する事由に關する法規にまで遡つてこれを示す必要はない」ことを判示している。(昭和二三年(れ)第一一二號、同年七月一四日大法廷判決)
六 新刑訴法第四一一條は、日本國憲法に規定されているものを同條に再現して規定したものではなく新刑訴法の立案に際して始めて創定した新規定である。それ故新刑訴法の制定される遥か以前に制定された刑訴應急措置法第一三條第二項に前記新刑訴法第四一一條の規定が含まれていないことは云うまでもないことである。されば刑訴施行法第二條によつて舊刑訴法及び刑訴應急措置法が適用されて新刑訴法の適用されない本件について、新刑訴法第四一一條が刑訴應急措置法第一三條第二項に含まれているものとして當裁判所の職権による原判決の破毀を促す論旨は採用することが出来ない。
七 新憲法の施行後においても特に公開したことを調書に明記しなくとも憲法の違反とはならないことについてはすでに當裁判所大法廷が詳細にわたつて判示したところである。(昭和二二年(れ)第二一九號同二三年六月一四日當裁判所判決)
八 上告趣意書は各上告人が、上告の理由を明示してこれを提出すべきものである(舊刑訴法第四二五條第一項)。ただ趣意書に上告の理由を具體的に掲げないで、すでに提出されている相被告辯護人の論旨を援用することは差支えないとしても、いまだ提出されていない将來の論旨を採用することは上告の理由を明示するものではないから許されないものと云わなければならない。本論旨は、相被告人並びに相辯護人提出の上告趣意書は、上告人等の利益においてすべてこれを援用するというのであるが、被告人Aの各辯護人の上告趣意書は、この趣意書より遅れて後日に提出されたものであるから、この分の援用は許されない。

参照法条

 刑訴應急措置法附則2項,刑訴應急措置法附則4項,刑訴應急措置法13條2項,刑訴應急措置13條2項,憲法14條,憲法32條,憲法37條,舊刑訴法410條11號,舊刑訴法360條1項,舊刑訴法60條4項,舊刑訴法64條,舊刑訴法410條7號,舊刑訴法425條1項,新刑訴法411條,刑訴施工法2條

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