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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和26(あ)4394

事件名

 窃盗

裁判年月日

 昭和29年9月8日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 決定

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第8巻9号1471頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和26年9月21日

判示事項

 一 起訴状記載の訴因が刑法第二四四条第一項後段の親族相盗にあたるに拘らず告訴を欠く場合と訴因変更の可否
二 起訴条記載の訴因が刑法第二四四条第一項後段の親族相盗にあたるに拘らず告訴を欠く場合と起訴手続の効力

裁判要旨

 本件公訴にかかる窃盗の事実が、刑法二四四条一項後段の親告罪であるか否かは、最終的には、裁判所により事実審理の結果をまつて、判定さるべくものであり、必ずしも起訴状記載の訴因に拘束されるものではない。従つて、本件のように、事実審理の過程において起訴状に記載された訴因事実が前示の親告罪にあたることが明らかになつた場合にも、適法な告訴がないからといつて、所論のようにその起訴手続を直ちに無効であると断定すべきではない。尤も、かように訴因について訴訟条件を欠くことが明らかとなつたときは、裁判所は、もはや、この訴因について実体的訴訟関係を進展させることを得ないから、訴訟条件の欠缺が治癒または補正されない以上、その起訴手続は不適法、無効なものとして、公訴棄却の形式的裁判を以つて、その訴訟手続を締結せざるを得ないことはいうまでもない(刑訴三三八条四号)。しかし、本来の訴因が右の如く訴訟条件を欠くからといつて、現行法上、それだけで訴因の変更、追加を絶対に許さないとする理由は何ら存しない(親告罪と否とにより直ちに公訴事実の同一性を失うものではない)。そして、本件においては、本来の訴因事実の一部について、訴因変更への手続が適法になされているのであつて、刑法二四四条の適用のない新しい訴因事実が裁判所により認定され、確定されたのであるから、その部分に関する限り本件被告事件は、本来、親告罪でなかつた訳であり、従つてこの点に関する本件起訴手続は、告訴がなくても、もともと、有効であつて無効でなかつたことに帰するのである。原判決には所論のような法令違反もない。

参照法条

 刑法244条1項,刑訴法312条,刑訴法338条4号

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