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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和26(れ)2518

事件名

 強盗殺人、同未遂、殺人予備、私文書偽造、偽造私文書行使、詐欺、詐欺未遂

裁判年月日

 昭和30年4月6日

法廷名

 最高裁判所大法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第9巻4号663頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和26年9月29日

判示事項

 一 甲事件について起訴勾留中の被告人を乙事件の被疑者として取り調べることの合憲性
二 甲事件につき起訴勾留された被告人を乙事件の被疑者として約三九日間連続約五〇回にわたり取り調べたことと憲法第三八条第一項にいう「不利益な供述の強要」
三 憲法第三八条第二項にいう「強制拷問による自白」にあたらない一事例
四 憲法第三八条第二項にいう「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」にあたらない一事例
五 絞首刑の合憲性
六 被告人の証人審問権と事件に関連性のない発問の禁止

裁判要旨

 一 検察官が、まず甲事件について起訴勾留の手続をとつた後、右勾留中の被告人を乙事件の被疑者として取り調べたとしても、検察官においてはじめから乙事件の取調に利用する目的または意図をもつて、ことさらに甲事件を起訴し、かつ不当に勾留を請求したものと認められない場合には、右取調をもつて直ちに自白を強制し、不利益な供述を強要したものということはできない。
二 甲事件を理由として勾留された被告人を、検察官が乙事件の被疑者として約三九日間連続約五〇回にわたり取り調べたからといつて、右取調をもつて直ちに不利益な供述を強要したものということはできない。
三 判示のような特異な性格を有する者が、検察官から判示のように取り調べられて、犯行を自白したからといつて、その自白をもつて、憲法第三八条第二項にいう「強制拷問による自白」ということを得ない。

四 昭和二三年八月二一日小樽市において乙事件の被疑者として逮捕され東京都に護送された後、起訴前の処分により勾留され、その後の取調により発覚した甲事件につき同年九月三日起訴され、翌四日右事件につき発せられた勾留状によつて引続き勾留されて来た被告人が、検察官の約一ケ月連続三十数回にわたる取調の後、同月二三日より翌一〇月九日までの間に、乙事件について自白した場合においても、事案の内容が極めて複雑で、かつ被告人の著しい特異性格から生ずる虚言癖に煩わされて取調に日時を要したものであり、その間検察官において相当の証人参考人を取り調べたというような特別の事情のある場合には、右自白をもつて憲法第三八条第二項にいう「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」ということはできない。
五 現在わが国の採用している方法による絞首刑は憲法第三六条にいう「残虐な刑罰」にあたらない。
六 証人の取調に際し、裁判長が訴訟指揮権に基いて、事件に関連性のない被告人の発問を制限しても、憲法第三七条第二項に違反しない。

参照法条

 憲法38条1項,憲法38条2項,憲法36条,憲法37条2項,刑訴応急措置法10条1項,刑訴応急措置法10条2項,刑訴応急措置法11条2項,刑法11条1項,監獄法71条,監獄法72条,刑訴法294条,刑訴法295条,旧刑訴法205条1項,裁判所構成法104条1項,裁判所構成法108条

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