裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
平成5(オ)650
- 事件名
地位確認等
- 裁判年月日
平成8年3月26日
- 法廷名
最高裁判所第三小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
民集 第50巻4号1008頁
- 原審裁判所名
福岡高等裁判所
- 原審事件番号
平成1(ネ)417
- 原審裁判年月日
平成4年12月21日
- 判示事項
一 労働協約上の基準が一部の点において未組織の同種労働者の労働条件よりも不利益である場合における労働協約の一般的拘束力
二 未組織の同種労働者に対する労働協約の一般的拘束力が一部否定された事例
- 裁判要旨
一 労働組合法一七条所定の要件を満たす労働協約に定める基準が一部の点において未組織の同種労働者の労働条件よりも不利益であっても、そのことだけで右の不利益部分について労働協約の効力を未組織の同種労働者に及ぼし得ないとすることはできないが、労働協約によって特定の未組織労働者にもたらされる不利益の程度・内容、労働協約が締結されるに至った経緯、右労働者が労働組合の組合員資格を認められているかどうか等に照らし、労働協約を右労働者に適用することが著しく不合理であると認められる特段の事情があるときは、その効力を右労働者に及ぼすことはできない。
二 定年年齢の改定、退職金算定方法の変更等を内容とし、労働組合法一七条所定の要件を満たす労働協約につき、その効力を未組織の同種労働者である甲に及ぼしたならば、甲は、これによって定年年齢が六歳引き下げられて、右労働協約の効力を生じたその日に、既に定年に達していたものとして退職したことになるだけでなく、それと同時に、その退職により取得した退職金請求権の額が従来の退職金手当規程によって算出される金額よりも減額されることになるという大きな不利益だけを受ける立場にあり、しかも、甲は労働組合の組合員資格を認められていなかったなど判示の事実関係の下においては、従来の退職手当規程に従った退職金の支払を続けていけば使用者の経営が著しく悪化することになるなどの事情があったとしても、退職金の額を右金額を下回る額にまで減額するという不利益を甲に甘受させることは著しく不合理であって、その限りにおいて、右労働協約の効力は甲に及ぶものではない。
- 参照法条
労働組合法17条
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