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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和23(れ)1252

事件名

 強姦致死

裁判年月日

 昭和24年7月9日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第3巻8号1174頁

原審裁判所名

 大阪高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和23年6月10日

判示事項

 一 暴行又は脅迫を以つて婦女の心神を喪失させ若しくは抗拒不能に爲して姦淫した行為の擬律
二 強姦の點が未遂に終つた強姦致死罪の擬律
三 驚愕によつて犯行を中止した場合と中止未遂
四 死因の確実性につき程度の差のある鑑定の結果を綜合して死因を確定することの適否
五 原審において從來の自白を飜した場合における同自白の任意性及び眞實性の有無と裁判所の自由裁量

裁判要旨

 一 刑法第一七七條は暴行又は脅迫を以つて婦女を姦淫した者は、強姦の罪として處罰するを規定し、次に同法第一七八條において、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又はこれをして心神を喪失せしめ、若しくは抗拒不能ならしめて姦淫したる者についても、前條の例による旨を規定している。かかる法條の排列から見れば、苟しくも暴行又は脅迫を以つて婦女を姦淫した者は、前條に該當するのであつて從つてその暴行又は脅迫によつて、婦女をして心神を喪失せしめ、若しくは抗拒不能ならしめて姦淫した者も、また當然これに包含せられるものと解すべきである。
二 強姦致死罪は單一な刑法第一八一條の犯罪を構成するものであつて、強姦の點が未遂であるかどうか及びその未遂が中止未遂であるか障礙未遂であるかということは、單に情状の問題にすぎないのであつて、處斷刑に變更を來たすべき性質のものではにから、本罪に對しては刑法第一八一條を適用すれば足り、未遂減輕に關する同法第四三條本文又は但書を適用すべきものではない。
三 犯罪の実行に着手した後、驚愕によつて犯行を中止した場合においても、その驚愕の原因となつた諸般の状況が、被告人の犯意の遂行を思い止まらしめる障碍の事情として客観性のあるものと認められるときは、障碍未遂であつて中止未遂ではない。
四 致死罪において、甲鑑定人の窒息死と認めるという鑑定の結果と乙鑑定人の窒息死と認めるのが蓋然性が最も多いという鑑定の結果とを、他の証拠と綜合して被害者の死因を窒素死と認定しても、理由齟齬の違法があるとはいえない。
五 被告人が原審において從來の自白を飜し、右は被告人の眞意に出たものではないと辯解した場合に、右自白の任意性並びに眞實性について如何なる範圍において取調を行い、その供述のいづれを措信するかは凡て事實審たる原審の自由な判斷に委ねられているところである。

参照法条

 刑法177条,刑法178条,刑法43条,刑法181条,刑法179条,旧刑訴法337条,旧刑訴法410条19号,憲法38条3項,旧刑訴法337条

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