裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和23(れ)1382
- 事件名
殺人、住居侵入
- 裁判年月日
昭和24年11月2日
- 法廷名
最高裁判所大法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第3巻11号1691頁
- 原審裁判所名
名古屋高等裁判所 金沢支部
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和23年8月30日
- 判示事項
一 犯人が被告人であることの證據が自白のみである場合の正否
二 犯罪の動機等を被告人の自白及び取調警察官の供述によつて認定することの可否
三 自白の強要を認定し得ない一事例
四 自白の強要を認定し得ない事例
五 證人が自己の證言を補充するために差し出した書面と證人尋問調書との關係
六 犯行の動機の一部を證據によらずして認定した違法と上告理由
- 裁判要旨
一 原審は被告人の自白のみならず多くの證據を綜合して判示事實を認定したのであつて、自白と原審舉示の他の證據とを綜合すれば原審認定の犯行事實を認定することが出來る。かかる場合犯人が被告人であることの證據が自白のみであつても違憲違法ではない。
二 殺人の動機及殺人に到るまでの被告人の心理的推移過程は、被告人の公判廷外の自白と被告人を取り調べた警察官の供述によつて認定しても違法ではない。
三 被告人の取調にあたつた司法警察官の作成した「殺人事件取調状況について」と題する記録編綴の書面中に、數日來犯行を否認していた被告人に對して」只今から捜査會議を始めるが取調にあたつている者は殆んど犯人は君だと信じている」とか唾液鑑定の結果によつては「否認しても無駄である」とか「自供が送れる程被告人に不利である」と繰り返し説得し眞相を追及した旨の記載があることだけで被告人の自白が強要によつたものと認定することはできない。
四 被告人が第一、二審公判廷で、警察での自白は取調官からアゝではないかコウではないかと問い詰められ強激な堪えられぬ苦痛を受けたので、取調官の云わるまゝ答えて了つたものでそれは皆事實に反すると供述したことだけで、直ちに自白が強要によつたものと斷定することはできない。
五 證人尋問調書に當該證人が自己の證言を補充するため書面を差し出し裁判長がこれを同調書の末尾に添付すると告げた旨の記載があり、且つ同調書と該書面との間に同調書作成者の契印が押してあるときは、右書面は同尋問調書の一部をなすものと認められる。
六 證據によらずして事実を認定した違法があつても、その事實が犯罪の動機として極めて輕微且つ間接の遠因に過ぎないため判決に影響を及ぼすべきものとは到底官考えられない場合には上告の理由とならない。
- 参照法条
憲法38条3項,憲法38条1項,旧刑訴法337条,旧刑訴法56条,旧刑訴法71条2項,旧刑訴法336条,旧刑訴法409条