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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和23(れ)1426

事件名

 賍物牙保、賍物故買

裁判年月日

 昭和24年10月5日

法廷名

 最高裁判所大法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第3巻10号1646頁

原審裁判所名

 名古屋高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和23年7月8日

判示事項

 一 憲法第三八條第三項刑訴應急措置法第一〇條第三項の自白に補強證據を要するとする法意
二 犯罪事實の一部の證據が被告人の自白だけである場合と補強證據
三 賍物罪の成立に必要な賍物たることの認識の程度
四 罰金を完納できない者に對する勞役場留置とその金錢的換價率
五 金千圓の罰金不完納による勞役場留置期間を一日金二〇圓と定めたことの合憲性

裁判要旨

 一 憲法第三八條第三項及び刑訴應急措置法第一〇條第三項において「自己に不利益な唯一の證據が本人の自白である場合には有罪とされ」ないと規定した法意は、現實には犯罪が行われていないのに、被告人の架空は自白によつて犯罪が行われた如く虚構されて有罪とされる危險を防止するために、被告人を有罪とするには、自白のほかに自白の眞實に合致することを裏書するに足りる他の證據(補強證據)を必要とする趣旨を明らかにしたものである。
二 他の證據によつて犯罪が現實に行われた客觀的事實が裏書されて自白が架空のものでないことが確められる限り、たとい犯罪事實の一部の證據が被告人の自白だけであつてもこれらの證據と相まつて自白により犯罪事實を認定することは、法の許容するところと云わなければならない(昭和二二年(れ)第一五三號同二三年六月九日當裁判所大法廷判決參照)
三 贓物に關する罪の成立に必要な贓物たることの知情は、財産罪により不法に領得された物であることを認識すれば足りるのであつて、その物が何人のいかなる犯行によつて不法に領得されたかの具体的事實までをも認識することを要するものではない。
四 罰金刑の言渡を受けた者が罰金を完納することができない場合の勞役場における留置は、刑の執行に準ずべきものであるから(舊刑訴第五六五條、刑訴五〇五條)留置一日に相應する金錢的換價率は、必ずしも自白な社會における勤勞の報酬額と同率に決定されるべきものではない。
五 原審が被告人兩名において金千圓の罰金を完納することができないときは金二〇圓を一日に換算した期間被告人等を勞役場に留置すると言渡したことは、基本的人權と法の下における國民の平等を保障した憲法第一一條に反するものではない。

参照法条

 憲法38条3項,憲法11条,刑訴応急措置法10条3項,刑法256条,刑法38条2項,刑法18条1項4項,刑法18条,旧刑訴法565条

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