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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和23(れ)281

事件名

 食糧管理法違反

裁判年月日

 昭和25年2月1日

法廷名

 最高裁判所大法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第4巻2号88頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和23年1月30日

判示事項

 一 刑訴應急措置法第一三條第二項と憲法第三二條
二 憲法第三六條にいわゆる「残虐な刑罰」
三 食糧管理法の目的と國民の生存權

裁判要旨

 一 所論憲法第三二條は、何人も裁判所において裁判を受ける權利であることを規定したに過ぎないもので、如何なる裁判所において、裁判を受くべきかの裁判所の組織、權限等については、すべて法律において諸般の事情を勘案して決定すべき立法政策の問題であつて、憲法には第九一條を除くの外特にこれを制限する何等の規定も存しない。從つて三審制を採用する裁判制度において、上告審を純然たる法律審すなわち法令違反を理由とするときに限り上告を爲すことを得るものとするか、又は法令違反の外に量刑不當乃至事實誤認の上告理由をも認めて事實審理をも行うものとするかは、立法を以て適當に決定すべき事項に屬する。されば舊憲法時代の訴訟手續において刑訴法第四一二條の規定により量刑不當の上告理由を許していたにかかわらず、刑訴應急措置法第一三條第二項の規定において右刑訴法の規定を適用しないものと規定しからと云つてその規定を目して右憲法規定の違反なりとする所論は當を得ない。(昭和二二年(れ)第五六號同二三年二月六日宣告大法廷判決參照)。
二 憲法第三六條にいわゆる「残虐な刑罰」とは刑罰そのものが人道上残酷と認められる刑罰を意味し、法定刑の種類の選擇又は範圍の量定の不當を指すものではない(昭和二二年(れ)第三二三號同二三年六月二三日宣告大法廷判決參照)。
三 食糧管理法はその主要な目的手段として國民全体の食生活を安定確保するため、食糧生産者から余剰食糧を供出せしめ一般消費者にでき得る限り多く分配せんとするものであるから、國民食糧生産者は、この法律によつて直接その生命又は生活を害せられることなく、また一般消費者はこの法律によつて寧ろその生命又は生活を保障せられるのであるから、所論のごとく憲法の保障する國民の生存權を否定するものではなく、寧ろこれを保護するものである。また、同法並びにその附屬法令は、第二次的手段として、主要食糧の讓渡又は移動等を一般的に禁止又は制限し若しくは配給量につき一定の限度を設け得るものとしたが同時にその讓渡、移動等については許可を認め配給については増配給食等の特別配給の方法をも認めているからこの點からしても所論のごとく同法をもつて合理性を欠き又は社會の現實に合はない國民のひとしく守り得ない。結局國民の生存權を否定する法令であると云うことはできない。(昭和二三年(れ)第二〇五號同年九月二九日宣告大法廷判決參照)。

参照法条

 憲法32條,憲法81條,憲法36條,憲法25條1項,刑訴應急措置法13條2項,舊刑訴法412條,舊刑訴法414條,食糧管理法1條

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