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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和23(れ)545

事件名

 窃盗教唆、賍物故買

裁判年月日

 昭和23年11月18日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第2巻12号1597頁

原審裁判所名

 秋田地方裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和22年5月27日

判示事項

 一 賍物の對價として得た物を沒收するにはその對價を得た行爲が犯罪を構成することを必要とするか
二 刑訴法第三七三條の「被害者ニ還付スヘキ理由明白ナル」旨の判示の要否
三 賍物の對價として得た金錢は沒收し得るか
四 公定價格ある賍物の對價として得た金錢に對する被害者の交付請求權の範圍

裁判要旨

 一 所論のごとく物の對價を得た行爲(本件では賍物の賣買行爲)が犯罪を構成する場合でなければ、その對價の沒收の言渡ができぬと論ずるのは全くの獨斷である。犯罪行爲によつて得た對價を沒收するのであれば同項第三號によるのであつて、第四號によるのではない。そして第四號の對價を取得する行爲については、それが犯罪を構成することを要件とするものでないことは規定上も明らかである。
二 原審判決においては、賍物の對價として得た物を被害者から交付の請求があつたこと及びその適用法條は刑訴法第三七三條第二項であることを明示しているのであるから、所論のように被害者に還付すべき理由が明白である旨を特に説示しなくともその趣旨を判示していることは自明であると言わなければならぬ。
三 刑法第一九條第一項第四號の規定は獨立した沒收事由として追加規定せられたものであるから、同號を適用するのに前號所定の物が同條第二項の規定により沒收し得るものであることを前提とすべき理由は毫も存しない、それ故前記贓品の對價物たる押收金全額は、犯人以外の者に屬せざる限り沒收し得る譯である。
四 本件では刑訴第三七三條第二項の規定に基き贓物の對價物につき被害者から交付の請求があつた。普通の場合であつたならば、對價物の全部を被害者に還付すべきであろうが既に贓物は處分せられた後のことであるから、被害者が犯人に對して損害賠償として交付を請求し得るのは、法令の許容する價額を標準とすべきであり、從つて本件においては「みのり」千百個、「きんし」六千本に對する處分當時の公定價額三千二百四〇圓に相當する押收現金の還付であると言わねばならぬ。されば、原判決がこれを被害者に還付する言渡をなし、これを差引きたる押收金の殘額二萬四千五百九十五圓を沒收したのは正當である

参照法条

 刑法256条2項,刑法19条,刑法256条,刑訴法373条,刑訴法49条1項,刑訴法373条2号

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